南 康範, 河野 匡志, 工藤 正俊

Yasunori MINAMI, Masashi KONO, Masatoshi KUDO

近畿大学医学部消化器内科

Gastroenterology and Hepatology, Kindai University Faculty of Medicine

キーワード :

【背景】
ソナゾイドを用いた造影超音波の撮像方法もphase inversionやamplitude modulation等あるものの，硬変肝の症例や深部病変の観察では造影モードにおける腫瘍の描出が不良となることがしばしばである．一方，低音圧による造影tissue harmonic imaging（low MI contrast THI）では近位から深部までの良好な空間分機能で造影剤によるコントラスト信号を重ね合わせる画像なため，肝腫瘍における視認性の向上が期待できる．肝腫瘍の視認性に関してlow MI contrast THIと通常の造影モード（phase inversion: PI）を比較し検討した．
【対象・方法】
対象は肝腫瘍184結節（男性116名，女性68名），その内訳として肝細胞癌134結節，転移性肝癌7結節，血管腫14結節，その他（FNH・AMLなど）29結節であった．使用機器はLOGIQ E9（プローブ：C1-6）で標準搭載されているTHIモードを用い，音圧を0.20～0.28に調整し，ソナゾイドは0.010ml/kgをボーラス静注で投与した．撮像について，後血管相にて腫瘍をPIとlow MI contrast THIで観察し，「腫瘍境界の明瞭さ」について評価した．
【結果】
low MI contrast THIにおいて視認性が良好であったのが49％，low MI contrast THIとPIと同等が34％，PIの方が優れていたのが17％であった．low MI contrast THIで良好であった結節の深度は平均8.9cmで，PIで優れていた（low MI contrast THIが劣っていた）結節の深度は平均5.8cmであった．ただし，未治療のHCC結節において，PIとは異なりlow MI contrast THIで等信号を示したのが12結節（12％）であった．
【結語】
low MI contrast THIではPIと比べ，より深部病変において腫瘍の輪郭や境界が明瞭であった．コントラスト分解能においてlow MI contrast THIはPIより劣るが，例えば深部病変で境界不明瞭な結節のHCCに経皮的穿刺治療を行う際には，このlow MI contrast THIモードでの造影下穿刺が有用と思われる．