Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器7 肝臓 診断 肝腫瘤の診療ガイドラインを考える

(S313)

新しい造影法導入後の問題点

Problems after introduction of new contrast method of CEUS

小川 力, 盛田 真弘, 野田 晃世, 大村 亜紀奈, 久保 敦司, 石川 哲朗, 松中 寿浩, 玉置 敬之, 柴峠 光成, 工藤 正俊

Chikara OGAWA, Masahiro MORITA, Teruyo NODA, Akina OMURA, Atsushi KUBO, Tetsuro ISHIKAWA, Toshihiro MATSUNAKA, Hiriyuki TAMAKI, Mitsushige SHIBATOGE, Masatoshi KUDO

1高松赤十字病院消化器内科, 2近畿大学医学部附属病院消化器内科

1Division of Gastroenterology and Hepatology, Takamatsu Red Cross Hospital, 2Division of Gastroenterology and Hepatology, Kindai University Hospital

キーワード :

2012年に改訂・公示された「肝腫瘤の超音波診断基準」は重要な点が簡潔に網羅され,汎用性が高い診断基準と考えられ,日常診療に用いられている.しかしながら地方の一般病院では,造影USに関して新しい造影法の導入に伴い,診断基準の問題よりは運用面での問題が強いが,いくつかの問題点が挙げられているため報告する.
各超音波機器メーカーにより原理,呼び方に違いはあるがAM法,PS(PM or PI or )法と言われる通常の撮影方法,最近普及しているlow MI,およびSMIとの併用,造影を用いたcolorized fusion等様々な新しい造影法,modalityとの併用が,新しい「肝腫瘤の超音波診断基準」後に普及し,日常診療に用いられている.上記の結果,同じ肝腫瘤でも所見が術者により変わることが散見され,特に診断に重要なPost vascular phase(kupffer phase)でのdefectの評価は,使用する造影方法,術者により,結果が異なることを度々経験し,DRPI(Defect Re-perfusion Imaging),診断結果も変わってくる重要な問題である.
また造影モードの違いのみならず,使用する超音波機種の特徴を把握することで,vascular phaseでの腫瘍血管の検出能力にも差がでることも経験される.しかし造影USの経験豊富な術者であれば認識されているが,その後の新しいtechnologyについては「肝腫瘤の超音波診断基準」にもその詳細は記載されておらず,全国で造影検査を行っている術者に普及している印象は残念ながら感じられない.
上記を改善する目的で,これまで院内,院外で造影モードによるPost vascular phase(kupffer phase)でのdefectの違い,各社超音波装置による長所の違い,同じ超音波装置でも使用プローブ(コンベックスvsリニア)での違い等を実際の動画で提示し,その啓蒙を行っている.そのうえで造影USでのPost vascular phase(Kupffer phase)ではすべてのモードでのdefectの評価を行っている.また造影超音波所見では,単なるPost vascular phase(Kupffer phase)でのdefectの有無のみではなく,どのモードでの評価かを所見に明記する事と,可能であれば取り込み画像に造影モードのコメントの記載を推奨している.
しかしながら肝腫瘍は無症状で緊急性がないことが多く,治療前にRFA術者が再検を行う体制からの安心感のためか,十分に肝腫瘍の造影所見の統一性,動画での保存が徹底されていない問題がある.また当院のみでなく超音波での対象臓器が広範囲になったことによる超音波技師の不足と若い消化器内科医の超音波離れ,勉強会,教育できる指導者の圧倒的な不足の問題も大きいと考えられる.
本発表では上記に記載した啓蒙に用いている動画等を提示し,次回の「肝腫瘤の超音波診断基準」の改訂の際は,造影USの際は撮影モードの記載の推奨を明記することを提案する.