Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器6 肝臓 診断 肝腫瘍の悪性度診断~Bモード・エラスト・Sonazoid造影~

(S310)

肝癌の悪性度診断における造影3D超音波の有用性

Usefulness of contrast-enhanced 3D ultrasonography for diagnosing malignancy of hepatocellular carcinoma

麻生 和信, 岡田 充巧, 玉木 陽穂, 太田 雄, 大竹 晋, 太田 嗣人

Kazunobu ASO, Mituyoshi OKADA, Yosui TAMAKI, Yu OTA, Shin OTAKE, Tsuguhito OTA

旭川医科大学内科学講座病態代謝内科学分野

Division of Metabolism and Biosystemic Science, Department of Medicine, Asahikawa Medical University

キーワード :

【はじめに】
肝癌悪性度の指標となる組織学的分化度や脈管侵襲は,腫瘍形態,腫瘍血管構築,Kupffer細胞数などと関連することが知られており,造影3D超音波(造影3D)はそれらを包括的に評価できる手段として臨床応用されている.そこで,今回は肝癌の悪性度診断における造影3Dの有用性について報告する.
【対象】
2017年10月31日までに造影3Dを行った肝腫瘍連続140症例196結節を対象とした.腫瘍の内訳は肝細胞癌(HCC)155結節,肝内胆管癌(ICC)8結節,転移性肝腫瘍(Meta)7結節,肝血管種(HEM)23結節,限局性結節性過形成(FNH)3結節であった.腫瘍径中央値は21.9mm(7-108mm),腫瘍深度中央値は7.0cm(1.9-13.3cm)であった.
【方法】
1.画像取得:使用装置はAplio 500.造影3Dの撮像はMechanical 3D probeを使用し,Sonazoid 0.2ml/body投与後,Differential CHI 5.0MHzのHigh MIモード(MI値0.73-0.80)にて行った.volume dataは血管相,後血管相ともに自動走査によって取得した.2. 画像評価: 時相毎にMPRとMIPを用いて評価した.本研究は肝腫瘍の質的診断,肝癌の腫瘍形態評価および組織分化度診断における造影3Dの有用性ついて検討した.
【結果】
1.肝腫瘍の質的診断:造影3Dの質的診断率はHCC/ICC/Meta/HEM/FNH 96.4/99.0/99.0/99.5/100(%)と高率であり,さらに客観的に腫瘍血管の連続性を評価できるため造影2D超音波(造影2D)では困難なICCとMetaの鑑別に有用と考えられた.2. 肝癌の腫瘍形態評価:後血管相の腫瘍欠損像について造影2Dと造影3Dを比較した結果,境界明瞭と診断された結節は造影2Dでは4%にすぎなかったが,造影3Dでは39%にみられ有意にコントラストが良好と判定された(P<0.001).さらに肝癌肉眼型の正診率を調べた結果,切除肝癌 23例において造影3Dの肉眼型正診率は100%であった.以上の結果から,高音圧造影3Dは造影効果に優れ,かつ多断面を正確に評価できることが示唆された.3.肝癌の組織分化度診断:5cm未満の切除肝癌16例を造影3Dの腫瘍欠損像から輪郭明瞭型(n=8)と輪郭不明瞭型(n=8)に大別し,組織学的分化度との関連について検討した.その結果,輪郭不明瞭型では高分化型肝癌25%,中分化型肝癌75%であったのに対し,輪郭明瞭型では中分化型肝癌12.5%,低分化型肝癌62.5%,混合型肝癌その他が25%と有意に高悪性度肝癌の占める率が高くなった(P=0.0012).さらに癌部と非癌部で輝度比を比較した結果,腫瘍輪郭像はKupffer細胞の多寡と関連し,輪郭明瞭型ではKupffer細胞数が大幅に減少している事が示唆された.すなわち,造影3D後血管像は肝癌の悪性度診断に有用であり,肝癌の診断体系において重要な役割を持つことが示唆された.
【結語】
造影3Dは肝癌の病理学的因子を加味した精密病態診断が可能であり,実臨床では肝癌の治療選択において有用性が示唆された.