Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器5 肝臓 エラスト エラストグラフィは何を見ている?

(S303)

C型慢性肝炎のDAAs治療による肝硬度変化:肝線維化改善の評価に及ぼす炎症の影響

Reduction of liver stiffness by DAAs treatment for chronic hepatitis C: Influence of inflammation on the evaluation for improvement of fibrosis

川部 直人, 橋本 千樹, 菅 敏樹, 高村 知希, 野村 小百合, 小山 恵司, 西川 徹, 刑部 恵介, 市野 直浩, 吉岡 健太郎

Naoto KAWABE, Senju HASHIMOTO, Toshiki KAN, Tomoki TAKAMURA, Sayuri NOMURA, Keishi KOYAMA, Toru NISHIKAWA, Keisuke OSAKABE, Naohiro ICHINO, Kentaro YOSHIOKA

藤田保健衛生大学肝胆膵内科

Department of Liver, Biliary Tract and Pancreas Diseases, Fujita Health University

キーワード :

【目的】
C型肝炎ではインターフェロンフリーの直接作用型抗ウイルス剤(direct-acting antivirals; DAAs)治療により大多数の症例でウイルス排除(SVR)が得られるようになった.超音波エラストグラフィにより測定される肝硬度は治療効果の評価にも用いられるが,肝の線維化改善と炎症改善の鑑別は困難なことが多い.今回C型慢性肝炎に対するDAAs治療による肝硬度の変化について,transient elastography(TE)とvirtual touch quantification(VTQ)を用いて肝線維化改善の評価に及ぼす炎症改善の影響を検討した.
【方法】
2014年9月~2017年11月DAAs治療を行ったC型慢性肝炎~代償性肝硬変421例を対象とし,TEでliver stiffness(LS; kPa),VTQでvelocity of shear wave(Vs; m/s)を経時的に測定した症例でLSとVsの変化を検討した.治療内容はGenotype 1型に対するdaclatasvir(DCV)/asunaprevir(ASV),sofosbuvir(SOF)/ledipasvir(LDV),2型に対するSOF/ribavirin(RBV)で検討した.
【成績】
DCV/ASVでは,治療前(12.7kPa, 1.86m/s)と比較し,治療終了時にLSは有意に低下していたが(9.9kPa, P<0.000),Vsは有意な低下はなく(1.75m/s),LS,Vsとも治療終了6ヶ月後(9.9kPa, 1.67m/s),1年後(9.9kPa, 1.75m/s),2年後(9.4kPa, 1.69m/s)では治療前と比較し有意に低下していた(全てP<0.01).SOF/LDVでは,治療前(10.9kPa, 1.59m/s)と比較し治療終了時にLSは有意に低下していたが(8.7kPa, P=0.0142),Vsは有意な低下はなく(1.52m/s),終了6ヶ月後で治療前と比較しLSは有意に低下し(7.9kPa, P=0.0002),Vsは低下する傾向を認めた(1.41m/s, P=0.0905).SOF/RBVでは,治療前(10.8kPa, 1.67m/s)と比較し,治療終了時にLSは有意に低下していたが(9.2kPa, P=0.0280),Vsは有意な低下はなく(1.68m/s),終了6ヶ月後で治療前と比較しLSは有意に低下し(7.9kPa, P=0.0014),Vsは有意な低下はなかった(1.58m/s)が1年後~2年後で有意に低下した(1.46m/s, P=0.0006).全ての治療でLS,Vsとも治療終了時と比較すると6ヶ月後,1年後は有意な低下は認めなかった.また,全ての治療でALTは治療前と比較し治療終了時に有意に低下していたが(全てP<0.0001),治療終了時と比較し6ヶ月後,1年後には有意な低下は認めなかった.過去の当科の肝生検症例のROC解析に基づき設定した肝線維化stageのcut-off値(LSでF2: 6.9kPa,F3: 9.5kPa,F4: 11.4kPa,VsでF2: 1.28m/s,F3: 1.44m/s,F4: 1.73m/s)を用いLSとVsを推定肝線維化stage(F0-1, F2, F3, F4)の4段階に分類すると,治療前の推定stage F3/F4の症例のうち,DAAs治療により推定stageが2段階以上低下(F0-1/F2)することに寄与する因子は,DCV/ASV のVsで治療前の血小板高値,SOF/LDVのLSで治療前のAlb高値,SOF/RBVのVsで治療前のT-Bil低値とγ-GTP低値が多変量解析で選択された.
【考案】
全ての治療においてLSは治療終了時に有意に低下する一方,Vsは治療終了時には有意な低下を認めず,終了6ヶ月後から低下していた.治療によるALT低下と一致してLSは早期から低下し,TEはVTQに比べ炎症の改善をより強く反映する可能性があると考えられた.治療前の炎症が強く肝予備能良好な症例で治療後の肝硬度が著明に改善した.
【結語】
C型肝炎治療後早期の肝硬度低下は肝炎鎮静化を反映する可能性が高く,肝硬度による肝線維化改善の評価には長期的検討が必要と考えられた.