Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器5 肝臓 エラスト エラストグラフィは何を見ている?

(S302)

最新型2D-SWEを用いた各種肝疾患におけるエラストグラフィ3機種の比較検討

Comparison of three models of elastography in various liver diseases using advanced 2D-SWE

伝法 秀幸, 斎藤 聡, 窪田 幸一, 藤山 俊一郎, 小林 正宏, 竹内 和男

Hideyuki DENPO, Satoshi SAITOH, Koichi KUBOTA, Syunichiro FUJIYAMA, Masahiro KOBAYASHI, Kazuo TAKEUCHI

1虎の門病院分院臨床検査部, 2虎の門病院肝臓センター, 3虎の門病院消化器内科

1Department of Clinical Laboratory, Toranomon Hospital kajigaya, 2Department of Hepatology, Toranomon Hospital, 3Department of Gastroenterology, Toranomon Hospital

キーワード :

【目的】
肝エラストグラフィが測定可能な機器が登場し数年が経ち,各社改良を重ねている.特にカラーマップのある2D-Shear Wave Elastography(SWE)の最新型ではソフト・ハードともに改良された結果,アーチファクトの低減や肥満患者への対応が可能となってきた.しかし各社間では機器の周波数等が異なるためか,同一症例でも数値が全く同じにはならない.そこで今回はTransient Elastography:TE(フィブロスキャン)と2種の最新型2D-SWEを用いて各種比較検討した.
【対象と方法】
対象はTEと2種の2D-SWEにて同時に肝硬度測定を施行した463例.年齢13~90歳(中央値65歳),男女比221:242,BMI14.4~38.5(中央値22.0)kg/m2,内訳はウィルス性慢性肝疾患:234例(C型140例,B型94例),正常肝:83例,NAFLD(含NASH):74例,nonBnonC:55例,その他17例.
使用機器はFibroscan502(ECHOSENCE社製):Mプローブ,XLプローブ,LOGIQ E9 XD clear ver2.0(GEヘルスケア社製),Aplio i800(キャノンメディカル社製)の3機種.測定部位は原則,右中腋下線と剣状突起下端の交点付近の肋間とした.測定方法はTE:皮下厚に応じて20mm未満はMプローブ,20~25mmは MとXL両方併用しバラつきの少ない方を採用,25mm以上はXLプローブを使用し,既報の如く10回測定,IQR-median の差が30%以下の中央値を採用した.2D-SWE:アーチファクトのない良好なカラーマップに直径1cmのROIを体表より原則4cm付近に設定,5回以上計測し中央値を採用した.さらにAplio i800に搭載されたDispersion slopeも加え各種比較検討をした.
【結果】
①測定可能例は463例中,TE:455例(98.2%),E9-SWE:461例(99.5%),i800-SWE:460例(99.3%)であった.以下測定可能例に限定して検討.
②正常肝の肝硬度(中央値)は,TE:3.6,E9-SWE:3.98,i800-SWE:4.7であり,i800-SWEが若干高値であった.
③全例の相関係数(r)はTEvsE9-SWE=0.8205,TEvsi800-SWE=0.8065,E9-SWEvs i800-SWE=0.7593と良好であった.疾患別の相関係数(r)はC型慢性肝疾患で特に良好であり,TEvsE9-SWE=0.8402,TEvsi800-SWE=:0.8863,E9-SWEvs i800-SWE= 0.9155であった.また皮下が厚く従来測定困難であったNAFLD(含NASH)でもTEvsE9-SWE=0.8623,TEvsi800-SWE= 0.7270,E9-SWEvs i800-SWE= 0.7603であり,特にE9-SWEはTEと良好な相関であった.
④TE高値例(10kPa以上)での相関係数(r)は,TEvsE9-SWE=0.5983,TEvsi800-SWE=0.8175,E9-SWEvs i800-SWE= 0.7648であり,E9-SWEは他の2機種に比し低値であった.
⑤肝硬変の診断能を比較するとAUROCはTE:0.892,E9-SWE:0.884,i800-SWE:0.886,であり,3機種ともにFIB-4:0.765やAPRI:0.745より良好であった.
⑥Dispersion slope(m/s)/kHz:DSは,肝硬度と最も良好に相関し(r=TE:0.7285,E9-SWE:0.7595,i800-SWE:0.8147),さらにAST(r=0.4028)やALT(0.3952)とも相関を示した.また正常肝(中央値)のDSは10.7であったが,線維化の無いとされる,急性肝障害(13.1)やうっ血肝(18.4)でも正常肝に比し有意に上昇していた.
【まとめ】
最新型の2D-SWEは通常のBモードと同じプローブで引き続き行え,TEのM&XLプローブ併用と同等の肝硬度測定が可能となった.またi800-SWEのDispersion slopeは線維化の無い急性肝障害やうっ血肝の際にも上昇し,線維化以外で肝硬度が上昇する病態において鑑別に有用である可能性が示唆された.