三輪 治生, 沼田 和司, 尾関 雄一郎, 三箇 克幸, 廣谷 あかね, 手塚 瞬, 合田 賢弘, 杉森 一哉, 前田 愼

Haruo MIWA, Kazushi NUMATA, Yuichiro OZEKI, Katsuyuki SANGA, Akane HIROTANI, Shun TEZUKA, Yoshihiro GODA, Kazuya SUGIMORI, Shin MAEDA

¹横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター, ²横浜市立大学医学部消化器内科学

¹Gastroenterological Center, Yokohama City University Medical Center, ²Division of Gastroenterology, Yokohama City University Graduate School of Medicine

キーワード :

【緒言】
膵疾患に対する造影超音波検査は，高い空間分解能とリアルタイム性により，精細な血流診断が可能であるが，撮像法については一定の見解が得られていない．近年，機器の進歩に伴い，通常のtissue harmonic imaging（THI）を用いて，高frame rateでの造影超音波検査が可能となり，腫瘤の染影とともに血管像の描出も可能となった．
【目的】
膵疾患に対する，THIを用いた造影超音波検査の撮像法と所見について報告する．
【対象と方法】
対象は，2016年4月から2017年12月までに，膵充実性腫瘤に対してTHIを用いた造影超音波検査を施行し，確定診断が得られた24例．疾患の内訳は，膵管癌12例，神経内分泌腫瘍2例，腺房細胞癌1例，Solid pseudopapillary neoplasm（SPN）1例，腫瘤形成性膵炎 8例（慢性膵炎3例，自己免疫性膵炎（AIP）5例）であった．超音波装置は，GE healthcare社製 LOGIQ E9，probeはconvex型probeであるC1-6-Dを使用した．初めに，通常のTHIにて病変部を含む膵全域を観察し，続いて，THIのままMechanical indexを0.25-0.35まで下げ，ソナゾイド 0.2mL/bodyを急速静注した．ソナゾイド静注後は，膵実質の造影効果がpeakを迎えるまで腫瘤の最大面でprobeを静止し，その後は扇動走査により腫瘤全体と周囲の膵実質を観察した．造影60秒後までを動画保存し，造影効果の多寡，不均一性，血管の形態，血管拡張の有無についてretrospectiveに評価した．検査に際しては，患者の同意を取得し，本研究に関して倫理審査委員会の承認を得た．
【結果】
対象は男性17例，女性7例．平均年齢60.4歳（16-82歳）であった．膵管癌は，92％（11/12）でhypovascularであり，腫瘤内部の造影効果は全例で不均一であった．67％（8/12）で腫瘤辺縁に細い腫瘍血管（peritumoral vessels）を認めた．神経内分泌腫瘍のうち，1例（WHO分類Grade 1）はhypervascularであり，腫瘤内部に拡張した血管を認めた．1例（WHO分類Grade 3）は，hypovascularであり，内部に血管像を認めなかった．腺房細胞癌は，全体が不均一に造影され，内部に屈曲蛇行した不整な腫瘍血管を多数認めた．SPNは均一に造影され，腫瘤内部に散在する嚢胞様構造が明瞭になった．腫瘤形成性膵炎は，全例でisovascularであり，75％（6/8）は不均一に造影された．慢性膵炎は，3例とも線状の均一な血管を認めたのに対して，AIPは80％（4/5）で拡張した血管を認め，炎症性変化を反映した所見と考えられた．膵管癌の診断能について，hypovascular/造影効果不均一/peritumoral vesselの各所見に基づいて正診率を算出したところ，92％/83％/83％であった．
【結語】
THIを用いた造影超音波検査は，膵充実性腫瘤の染影と血管像を同時に評価でき，膵管癌の鑑別診断に有用である可能性が示唆された．