Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器3 肝臓 慢性肝疾患および門脈圧亢進症・肝血流の超音波診断

(S295)

DAAsが著効したC型慢性肝疾患における肝硬度の長期的な変化と食道静脈瘤の関係

Long-term changes and relationships esophageal varices liver stiffness type-C chronic liver disease direct-acting antiviral drugs has been effective

伝法 秀幸, 斎藤 聡, 窪田 幸一, 藤山 俊一郎, 小林 正宏, 竹内 和男

Hideyuki DENPO, Satoshi SAITOH, Koichi KUBOTA, Shunichiro FUJIYAMA, Masahiro KOBAYASHI, Kazuo TAKEUCHI

1虎の門病院分院臨床検査部, 2虎の門病院肝臓センター, 3虎の門病院消化器内科

1Department of Clinical Laboratory, Toranomon Hospital Kajigaya, 2Department of Hepatology, Toranomon Hospital, 3Department of Gastroenterology, Toranomon Hospital

キーワード :

【目的】
経口直接作用型抗ウィルス薬(DAAs)により高率にSustained virological response(SVR)が得られるようになり,エラストグラフィによる肝硬度も低下する事が報告されている.今回治療からSVR2年以上経過した症例に関して,肝硬度変化と門脈圧亢進症,特に食道静脈瘤(EV)への影響に関して比較検討した.
【対象と方法】
DAAsが著効しSVRが得られ,フィブロスキャンによる肝硬度測定を治療前・SVR1年・SVR2年の3回施行したC型慢性肝疾患209例.内訳は慢性肝炎132例,肝硬変77例.年齢:33~87歳(中央値68歳),男女比79:130.うち126例では上部消化管内視鏡を施行した.
使用機器はFibroscan502(ECHOSENCE):Mプローブ,XLプローブ.内視鏡システム:CV-290,GIF-290(オリンパス).フィブロスキャンは皮下厚20mm未満はMプローブ,20~25mmはM・XLプローブ併用しバラつきの少ない方を採用,26mm以上はXLプローブを使用し,既報の如く右肋間より10回測定し,IQR-medianの差が30%以下の中央値を肝硬度(LSM)とした.食道静脈瘤は上部消化管内視鏡検査にて,Form(F)分類とred color sign(RCS)を判定した.食道静脈瘤の治療は原則として予防的治療,治療基準は初回はF2以上かつRCS陽性,再治療はF1以上かつRCS陽性とした.除外症例は進行癌症例や門脈侵襲がみられた症例,LSM測定不能例とした.それらの症例において治療前・SVR1年・SVR2年の肝硬度変化や,食道静脈瘤の有無や内視鏡治療歴(EVL・EIS)の有無における肝硬度に関して比較検討をした.
【結果】
①DAAs治療による経時的な肝硬度変化:SVR全例の治療前/SVR1年/SVR2年のLSM中央値(kPa)は10.6/5.7/4.8と有意に低下した.また慢性肝炎群では8.0/4.7/4.2であり,肝硬変群では20.8/10.1/7.8/と両群で有意に低下した.
②食道静脈瘤の有無と肝硬度の関係:内視鏡施行した126例中,食道静脈瘤(EV)を認めたのは38例(30%)であり,これは肝硬変77例中の49%であった.EV有無による治療前/SVR1年/SVR2年の肝硬度中央値(kPa)は,EV有限会社群23.0/14.7/12.0であり,EV(無)群9.2/5.5/4.6となり各時期において有意にEV有限会社群が高値であり,経時的な肝硬度低下が少なかった.またEVが治療前より存在した症例はSVRが得られた後もEVは残存した.
③食道静脈瘤の治療有無と肝硬度の関係:DAAの治療前に食道静脈瘤治療施行したのは12例(10%)であった.SVR2年時におけるEV治療有無のCut offを9.5kPaとすると,感度83%特異度82%と良好であった.また非侵襲な線維化の指標であるFib-4・APRIと内視鏡治療有無の鑑別能を比較すると,AUROCはLSM:0.889,Fib-4:0.762,APRI:0.772であり,LSMは良好な鑑別能を有していた.
④SVR後にEV治療を施行したのは4例(追加2例,新規2例)あり,いずれもEV治療時のLSMは20kPa以上と高値であった.
【まとめ】
SVRとなったC型慢性肝疾患例の肝硬度は,経時的に有意に低下した.しかし一部の肝硬度変化が少ない例や,依然高値を呈する例では,治療を要する食道静脈瘤(riskey varices)を有する可能性があり注意を要し,その鑑別にはLSMが有用であった.