Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器3 肝臓 慢性肝疾患および門脈圧亢進症・肝血流の超音波診断

(S294)

DAA治療による門脈圧亢進症への影響

The effect of DAA to the portal hypertension

古市 好宏, 吉益 悠, 笠井 美孝, 竹内 啓人, 杉本 勝俊, 糸井 隆夫

Yoshihiro FURUICHI, Yu YOSHIMASU, Yoshitaka KASAI, Hirohito TAKEUCHI, Katsutoshi SUGIMOTO, Takao ITOI

東京医科大学臨床医学系消化器内科学分野

Gastroenterology and Hepatology, Tokyo Medical University

キーワード :

【諸言】
超音波エラストグラフィーによる脾弾性係数値が,食道胃静脈瘤や肝静脈圧較差(門脈圧亢進症)の予測因子になることが多数報告されている.C型肝炎(HCV)に対するDirect Acting Antivirals(DAA)薬により,ほぼ100%のSVRが得られるようになった.しかし,DAA治療が門脈圧亢進症に与える影響については明らかになっていない.
【目的】
DAA治療による門脈圧亢進症への影響を,脾弾性係数,門脈血流量,Spleen indexの変化を計測することで前向きに明らかにする.
【対象と方法】
倫理委員会承認の後,本研究への同意が得られたHCV患者34例(1b:19例,2a:10例,2b:5例)を対象とした.エラストグラフィー装置はAplio500を使用し,脾弾性係数,肝弾性係数,門脈血流量,Spleen index(SI)を治療前とSVR12時点で前向きに比較検討した.また,血液検査値についても比較検討した.尚,肝・脾硬度は5回計測し,SI値とPV量は3回計測し,その平均値を用いた.使用したDAA薬は1b:SOF/LDV,OBV/PTV/r,EBV/GZR,2a・2b:SOF/RBVである.
【結果】
治療成功率は100%で,全例でSVR12を達成した.脾弾性係数は73.5%(25/34例)の症例で低下し,平均値も26.6±12.1→19.7±7.4kPaと有意に低下した(p=0.002).門脈血流量は76.4%(26/34例)で上昇し,576.3±208.9→694.3±172.3mL/minと有意に変化した(p =0.003).SIは70.6%(24/34例)で低下したが,平均値は有意差が得られなかった(15.4±6.4→14.4±5.1cm2,p=0.052).肝弾性係数は88.2%(30/34例)で低下し,13.4±8.1→9.3±5.0kPaと有意に変化した(p=0.0001).血液検査値は血小板,Alb,AST,ALT,ヒアルロン酸,4型コラーゲン7S値が有意に改善していた.
【考察】
DAA治療でSVRが得られたことにより,脾臓内の免疫関連細胞数が低下し,脾臓内の細胞粘度が改善された結果,脾弾性係数が低下したと考えられた.また,肝炎の鎮静化により肝内うっ血と類洞機能が改善し,肝弾性係数低下と門脈血流量上昇をもたらしたと考えられた.脾弾性係数低下と門脈血流量上昇は,門脈圧亢進症の改善を表している可能性があり,今後も長期的な観察による解明が必要である.