金子 真大, 小川 眞広, 熊川 まり子, 平山 みどり, 松本 直樹, 中河原 浩史, 山本 敏樹, 石綿 宏敏, 小野 良樹, 森山 光彦

Masahiro KANEKO, Masahiro OGAWA, Mariko KUMAKAWA, Midori HIRAYAMA, Naoki MATSUMOTO, Hiroshi NAKAGAWARA, Toshiki YAMAMOTO, Hirotoshi ISHIWATA, Yoshiki ONO, Mitsuhiko MORIYAMA

日本大学病院消化器内科

Gastroenterology, Nihon University Hospital

キーワード :

【目的】
肝臓は血流に富む臓器であり動脈血と門脈血の血流の二重支配を受けていることは知られている．特に病態の進展と共に動脈血と門脈血の割合が変化しやがて門脈圧亢進症の状態になると考えられている．肝動脈枝は門脈域内でperibiliary capillary plexusを形成した後に門脈あるいは類同に注ぐとされ，門脈圧亢進症になるとperibiliary capillary plexusが増加するといわれている．近年高周波プローブの開発やドプラ検査の開発による血流感度の上昇も目覚ましく血流評価も詳細に行われるようになり，さらに造影超音波検査の導入によりさらなる血流評価が可能になっていると考えられる．そこで今回我々は，肝臓のpreipheral zoneに注目し高周波プローブを用いた造影超音波検査を施行し微細血流イメージングを試みたためその有用性を報告する．
【対象】
肝腫瘤性病変において造影超音波検査が施行され高周波プローブを用いてpreipheral zone の造影検査が施行された症例とする．正常例のほか背景肝が脂肪肝，慢性肝炎，肝硬変（B型，C型，アルコール性，PBC，AIH）症例である
【方法】
使用装置GEヘルスケア社LOGIQ 7,E9,S8,使用探触子9Lプローブ．sonazoid0.5ml/bodyを静注しpreipheral zoneを中心に拡大率を上げて記録を行った．評価は動脈優位相および門脈優位相～後血管相とし，動脈優位相で固定断面の場合は加算画像も用いて評価に用いた．
【結果】
門脈優位相～後血管相に関しては健常肝から慢性肝炎，肝硬変症の進展に伴い濃染部分が不均質になることが視覚的に確認可能であった．動脈優位相では，病態の進行例で動脈優位相の初期で不均質な濃染が特徴で門脈血十分な流入までの間には小結節の欠損像が確認されるのが特徴であり加算画像を駆使することでより客観的に評価が可能となった．この変化はB型肝硬変症例でより観察され抗ウィルス剤の内服後数年後には前述の変化が乏しくなっている症例も存在した．
【考察】
造影超音波検査は微細な血流の評価が可能であり，門脈優位相～後血管相にかけての不均質な濃染は肝実質内の線維化や壊死を推測させるものと考えられた．動脈優位相の変化は，肝硬変症で顕著に認められることより門脈圧亢進症においてperibiliary capillary plexusが増加や動脈血優位になる状態を反映している可能性が示唆された．また治療経過と共に血流変化が起こることも確認されたことより動脈血の増加状態は炎症性の変化も含まれており病態進展の評価のみではなく治療効果判定の手法としの有用性も示唆された．
【結論】
高周波プローブの発展と造影超音波検査，画像ソフトの導入により肝内の微細血流の変化が詳細に把握可能な時代になり今後の症例の積み重ねによりさらなる病態解析や治療効果判定の一助となることが予想された．
参考文献：Matsunaga Y,Terada T:Peribiliary capillary plexus around interlobular bilebducts in various chronic liver diseases:An immunohistochemical and morphometoric study.Patholo Int 49:869-873,1999