Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器3 肝臓 慢性肝疾患および門脈圧亢進症・肝血流の超音波診断

(S292)

Superb Micro vascular Imaging (SMI)による線維化診断の検討

Fibrosis diagnosis by Superb Micro vascular Imaging (SMI)

菊川 佳菜子, 打田 佐和子, 河田 則文

Kanako KIKUKAWA, Sawako UCHIDA, Norihumi KAWADA

大阪市立大学大学院肝胆膵内科学

Department of Hepatology, Osaka City University Graduate School of Medicine

キーワード :

【目的】
Direct Acting Antivirals(DAAs)の登場により,C型慢性肝疾患においては,高齢,線維化進展例においても高率にSVRが得られるようになった.しかしながら,SVR獲得後も肝硬変や肝癌へ進展する症例を多数認められることより,C型慢性肝疾患患者の観察過程で経時的な肝線維化の評価が必要となる.そこで今回,肝生検にかわる簡易な測定法としてSuperb Micro vascular Imaging(SMI)による線維化の診断を試みた.
【方法】
対象は2016年6月から2017年11月末までに当院にてSMIを施行したC型慢性肝疾患患者57例(年齢68(48-87)歳,男女比32:25)である.超音波装置は東芝メディカルシステムズ株式会社社製Aplio500,探触子はPLT-704SBT(中心周波数7.5MHz)を用いた.仰臥位で肝実質が広く描出される右肋間から肝右葉を観察した後,monochrome SMI(mSMI)に切替え,呼吸停止の状態で一定の速度で扇動走査を行い,加算画像を撮像した.連続した血管が5本以上描出されるフレームを解析画像とし,肝右葉表面1 cm以内に描出される血管のうち5本以上描出されるフレームを解析画像として用いた.SMIでの血管の蛇行を示す数値として屈曲蛇行係数(加算画像より抽出した5本の血管の屈曲蛇行値 x=(血管の長さ)/(血管の始点と終点の直線距離)の平均値)を使用し,肝硬変(LC)群と慢性肝炎(CH)群での比較検討とDAA治療前後の比較検討を行った.また屈曲蛇行係数と肝硬度・WBC・Hb・Plt・PT%・Alb・Cr・eGFR・T-Bil・AST・ALT・ALP・γ-GT・Ⅳ型コラーゲン・M2BPGi・AFPとの関連を検討した.本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った.
【成績】
1)LC群ではCH群と比較して屈曲蛇行係数が高く,血管の蛇行を強く認めた(1.14±0.041 VS 1.10±0.030 , p=0.0026).屈曲蛇行係数が1.12以上の群と1.12以下の群で比較すると,1.12以上の群では優位にLCが多かった(60% vs 15.6% , p<0.001).DAA治療前後における屈曲蛇行係数の差は前後で有意な差は認めなかった(治療前:1.101±0.059 vs治療後:1.090±0.010 , p=0.753).2)屈曲蛇行係数はγGT (p=0.0410),Ⅳ型コラーゲン(p=0.0428),M2BPGi(p=0.0424)に有意な相関を認めた.その他項目では相関を認めなかった.
【考察・結語】
LC群では屈曲蛇行係数が高く,線維化の進行に伴って肝表面の血管が屈曲蛇行することが示された.DAA治療直後では肝硬度の改善は認めるが血管の屈曲蛇行は改善を認めず,DAA治療後の線維化診断においては肝硬度と比較してSMIが線維化診断に優れている可能性がある.また屈曲蛇行係数はγ-GT,Ⅳ型コラーゲン,M2BPGiに強く相関していた.肝表面の血管の屈曲蛇行の原因については更なる検討が必要であるが,線維化の新たな評価法としてSMIの有用性が示唆された.