Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器2 消化管 腸閉塞の超音波診断

(S289)

超音波による腸閉塞の診断

Ultrasonographic diagnosis of bowel obstruction

今村 祐志, 畠 二郎, 眞部 紀明, 中藤 流以, 高田 珠子

Hiroshi IMAMURA, Jiro HATA, Noriaki MANABE, Rui NAKATO, Tamako TAKATA

1川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 2川崎医科大学総合医療センター中央検査科, 3川崎医科大学消化管内科学, 4三菱三原病院内科

1Division of Endscopy and Ultrasound, Dept. Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 2Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Medical Center, 3Gastroenterology, Kawasaki Medical School, 4Internal Medicine, Mitsubishi Mihara Hospital

キーワード :

はじめに
腸閉塞は,日常臨床でよく遭遇する疾患であるが,保存的治療で対応可能な病態から緊急手術が必要な病態まで,幅広い病態が含まれる.治療方針決定のためにも,腸閉塞を診断する際には,次の3つの質問に答える必要がある.1.腸閉塞はあるか?2.閉塞の部位と原因は?3.closed-loop obstructionや絞扼はあるか?
当施設の成績および文献的知見をもとに,超音波による腸閉塞の診断方法につき発表する.
1. 腸閉塞はあるか?
内容物や空気が充満した拡張腸管を認める.
2. 閉塞の部位と原因は?
拡張した腸管を追跡して,虚脱した腸管へ径変化がみられる部位を探す.小腸内に便のような内容物(”small-bowel feces” sign)が見られたら,近傍に狭窄部が見られることが多い.腸管径変化部位で,腫瘍,癒着,異物などの原因を検索する.
腸管径変化部位がなく,腸管蠕動が見られなければ麻痺性腸閉塞と診断する.
3. Closed-loop obstructionや絞扼はあるか?
絞扼性腸閉塞の診断は以下に記す.
3-1.絞扼性腸閉塞の病態・治療
絞扼性腸閉塞の超音波診断のためには,病態を理解することが必須である.
絞扼性腸閉塞は,外ヘルニアや内ヘルニアなど狭い間隙から腸管が脱出したり,腸管が捻転したりする際に,腸間膜血管も閉塞されることにより発症する.腸管の閉塞は,癒着性腸閉塞のような,ある一点の閉塞及び口側腸管拡張と異なり,腸管長軸上の二点が近接した部位で閉塞するため,閉鎖した腸管のみ閉塞(closed-loop obstruction)が特徴である.腸間膜血管の閉塞は,まず静脈が閉塞し,次第に動脈が閉塞して腸管壊死に至るように,絞扼性腸閉塞は段階的に進行する.
絞扼性腸閉塞の治療は緊急手術であるが,腸管が壊死しない状態では,絞扼解除のみで腸管温存が可能であるが,腸管が壊死している状態では,腸管切除が必要となり,手術方法が異なる.また,腸管壊死の状態では,穿孔から腹膜炎を併発し,予後が不良となる場合もある.腸管が壊死していない段階の絞扼性腸閉塞を,正確に診断することが重要である.
3-2.絞扼性腸閉塞の超音波像
Closed-loop obstructionと腸間膜血管閉塞を分けて考える.
Bモード像・ドプラ
・closed-loop obstruction
拡張した腸管を追跡すると,口側及び肛門側が近接した部位で狭窄した像を認める.この拡張腸管の内容物は液体で充満し,蠕動の低下あるいは消失を認める.進行した状態では腸管壁の肥厚,腹水を認める.さらには腸管壊死を反映して,腸管気腫,門脈ガスを認める.
Closed-loop obstructionとなった部位より口側の腸管は,単純性腸閉塞のような拡張像を呈するため,そこのみ観察して単純性腸閉塞と誤診しないように注意が必要である.
・腸間膜血管の閉塞
腸間膜静脈の拡張,あるいは腸間膜の浮腫を認める.早期では腸間膜静脈のみ血流シグナル低下あるいは消失を認め,進行した状態では,腸間膜動脈も血流シグナルが低下あるいは消失する.
造影超音波
早期では,動脈の開存を反映し,腸管の染影を認めるものの,造影剤到達の遅延,停滞などの所見を認める.進行した状態では動脈閉塞のため,腸管の染影が見られなくなる.
まとめ
腸管拡張を認め,腸閉塞と診断したら,腸管径が変化する部位を探して,その原因を検索する.絞扼性腸閉塞は診断の遅れが予後不良につながるため,見逃さないように留意する.その超音波像は,Bモードでは蠕動有無,腸管壁肥厚,腸間膜静脈拡張,腸間膜浮腫,腹水,造影超音波では腸管壁染影の遅延,停滞,消失である.