Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器1 肝臓 NASH NAFLDの診断と病期予測

(S284)

超音波BモードにおけるNAFLDの診断

Diagnosis of NAFLD using B-mode ultrasonography

多田 俊史, 熊田 卓, 豊田 秀徳, 金森 明, 橋ノ口 信一

Toshifumi TADA, Takashi KUMADA, Hidenori TOYODA, Akira KANAMORI, Shinichi HASHINOKUCHI

1大垣市民病院消化器内科, 2大垣市民病院形態診断室

1Gastroenterology and Hepatology, Ogaki Municipal Hospital, 2Imaging diagnosis, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
超音波Bモードによる超音波の脂肪肝スコアリングシステムとMRIによる肝内脂肪含有量の比較・検討を行った.
【対象】
当院で慢性肝疾患の精査において2016年1月から2017年9月のあいだに,Bモードによる脂肪肝スコアリングが施行され,かつMRIによるIDEAL-IQ法により肝内脂肪含有量(PDFF)が測定された449例のうちB型肝炎,C型肝炎331例をのぞいた126例である.患者背景は,男性59例,女性67例で,年齢は65.0(54.0-70.8)歳であった.
【方法】
 超音波の脂肪肝スコアは(1)高輝度肝と肝腎コントラスト(0-3点),(2)深部減衰(0~2点),(3)肝内脈管の不明瞭化(0-1点)の合計0-6点にスコア化した(Hamaguchi, et al. Am J Gastroeterol, 2007).算出された脂肪肝スコアとMRI-PDFFの比較・検討を行った.超音波装置はGE社LOGEQ S8,MRI装置はGE社 Discovery MR750Wをそれぞれ使用した.なおPDFFのカットオフは既報(Imajo et al. Gastroenterology, 2016)にしたがい,脂肪化grade ≧1,≧2,≧3をそれぞれ5.2%,11.3%,17.1%とした.連続変数は中央値(四分位範囲)で表した.
【結果】
(1)脂肪肝スコアは0/1/2/3/4/5/6の順にそれぞれ19(15.1%)/ 8(6.3%)/ 18(14.3%)/ 19(15.1%)/ 35(27.8%)/ 18(14.3%)/ 9(7.1%)であった.(2)PDFFは9.20(5.62-16.05)%であった.(3)脂肪肝スコアは0/1/2/3/4/5/6の順にそれぞれPDFFは4.10(2.70-6.15)/ 3.60(3.48-4.60)/ 7.25(5.85-9.12)/ 7.50(6.80-13.80)/ 12.80(9.15-13.60)/ 16.45(11.75-18.22)/ 27.10(24.70-29.40)%であった(p<0.001,Jonckheere-Terpstra検定).(4)PDFF脂肪肝gradeと脂肪肝スコアの各所見の診断能の検討において,grade≧1では,AUROCは,高輝度肝と肝腎コントラスト/深部減衰/肝内脈管の不明瞭化の順に0.790(95% CI:0.685 - 0.895)/ 0.768(95% CI:0.683-0.852)/ 0.763(95% CI:0.679-0.847)であった.続いてgrade≧2では,AUROCは,高輝度肝と肝腎コントラスト/深部減衰/肝内脈管の不明瞭化の順に0.736(95% CI:0.658-0.815)/ 0.719(95% CI:0.641-0.798)/ 0.718(95% CI:0.641-0.794)であった.最後にgrade≧3では,AUROCは,高輝度肝と肝腎コントラスト/深部減衰/肝内脈管の不明瞭化の順に0.734(95% CI:0.633-0.836)/ 0.643(95% CI:0.534-0.753)/ 0.606(95% CI:0.511-0.701)であった.(5)スコア合計点の診断能(AUROC)は,grade≧1のときは,0.825(95% CI:0.724-0.926)で,カットオフ2点の時,感度91.0%,特異度69.2%であった.続いてgrade≧2のときは,0.784(95% CI:0.704-0.864)で,カットオフ4点の時,感度76.9%,特異度70.3%であった.最後に,grade≧3のときは,0.713(95% CI:0.598-0.827)で,カットオフ5点の時,感度53.3%,特異度88.5%であった.
【考察】
 B-modeによる脂肪肝スコアはより脂肪肝の非侵襲的かつ客観的な評価方法でありMRI-PDFFとの比較において,スコアの上昇に伴いPDFF値の有意な上昇が認められた.また脂肪肝の各gradeにおいてもAUROC≧0.7であり,比較的良好な診断能が得られた.すなわち主観的な評価になりやすい超音波BモードによるNAFLDの診断も,スコアリングシステムを用いることにより主観的な評価が一定可能であることが判明した.
【結論】
 Bモードによる脂肪肝のスコアリングは脂肪肝の評価において簡便かつ非侵襲的な検査法として有用である.