Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 消化器
シンポジウム 消化器1 肝臓 NASH NAFLDの診断と病期予測

(S284)

NAFLDの予後規定因子と超音波医学の果たす役割

Prognostic factors and ultrasonographic roles in NAFLD

角田 圭雄, 瀬古 裕也, 石破 博, 伊藤 義人, 今城 健人, 中島 淳, 多田 俊史, 豊田 秀徳, 熊田 卓, 米田 政志

Yoshio SUMIDA, Yuya SEKO, Hiroshi ISHIBA, Yoshito ITOH, Kento IMAJO, Atsushi NAKAJIMA, Shunji TADA, Hidenori TOYODA, Takashi KUMADA, Masashi YONEDA

1愛知医科大学内科学講座肝胆膵内科学, 2京都府立医科大学消化器内科, 3京都府立医科大学北部医療センター消化器内科, 4横浜市立大学肝胆膵消化器内科学, 5大垣市民病院消化器内科

1Hepatology and Pancreatology, Aichi Medical University, 2Gastroenterology, Kyoto Prefectural University of Medicine, 3Gastroenterology, North medical center, Kyoto Prefectural University of Medicine, 4Gastroenterology and Hepatology, Yokohama City University Hospital, 5Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

世界で成人の約4人に1人が罹患する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の10%程度に非アルコール性脂肪肝炎(NASH)が存在し,NASHは肝疾患関連死のリスクが高い.2型糖尿病(T2DM)患者は肝発癌リスクが高く,国内の糖尿病患者の死因の第三位は肝疾患であり,その要因としてNASHによる肝硬変・肝癌の関与が示唆される.米国ではNAFLDに由来する肝癌が年率9%ずつ増加しており,2020年までに肝移植の原因の第一位になる見込みである.NASH診断には病理組織での肝細胞の風船様変性が必須所見であり,現在のところNASH診断は肝生検によってのみ可能である(1-3).NASH発症に関わるPNPLA3遺伝子多型を測定し,肝生検で診断したNAFLD 238例の肝発癌を検討したところ,発癌例は全例NASHであり,そのリスク要因は線維化ステージ3/4 とPNPLA3遺伝子多型GGであった(4).近年では肝線維化の程度が予後・発癌に寄与することが明らかになり,NASHの有無の診断から肝線維化の評価へと移行しつつある.2017年に発表された米国肝臓病学会のガイダンスではこれまでに集積されたエビデンスを踏まえ,スコアリングシステムとしてはFIB4 index とNAFLD fibrosis score(NFS)を,画像検査としてはUS エラストグラフィ(Fibroscan, VCTE)とMR エラストグラフィ(MRE)(5)の4つのmodalityを非侵襲的肝線維化診断法として推奨されている(3).そこで本発表ではそれぞれの長所,短所について概説し,これらを用いたNAFLD診断アルゴリズムを提唱したい(6).またこれらのスコアリングシステムは循環器疾患や他臓器癌の発症と関連するとの報告もある(7,8).T2DM患者の大規模コホートでVCTEやMREを施行すると,6-8人に1人が高度肝線維化を合併しているとの報告が集積され,T2DM患者におけるサーベイランスの重要性が示唆される.今後はこれらのmodalityが発癌(肝および他臓器),心血管イベント,予後,治療効果のサロゲートマーカーとなりえるか否かを検証する必要がある.肝脂肪化の評価に関しては肝細胞に5%以上の脂肪化を認めればNAFLDと診断することから,通常のB-modeによる脂肪肝の検出感度には限界があるが,FibroscanによるControlled Attenuation Parameter(CAP)測定や通常USによるattenuation imaging(ATI),MRI-PDFF(proton density fat fraction)による脂肪化評価も可能となっているが,脂肪量の高低が予後に影響しない可能性や,肝線維化進行に伴って脂肪量が減少することも踏まえて,脂肪化の定量に関してはその測定意義そのものを再検証する必要がある.以上のようにNAFLD診療において超音波医学の果たしてきた役割は大きく,今後もエラストグラフィを中心にNASH診療における重要なポジショニングを占めることは間違いなく,更なるイノベーションが期待される.
参考文献:
1)Watanabe S, Hashimoto E, et al. J Gastroneterol 2015;50:364-77.
2)日本消化器病学会NAFLD/NASHガイドライン2014
3)Chalassani N, et al. Hepatology, in press.
4)Seko Y, Sumida Y et al. Hepatol Res 2017;47:1083-1092
5)Imajyo K, Nakajima A, et al. Gastroenterology 2016;
6)Yoneda M, Sumida Y et al. J Gastroneterol, in press
7)Tada T, Kumada T et al. Hepatol Commun in press
8)Ishiba H, Sumida Y et al. Hepatol Res 2017;47:1083-1092