Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 循環器
パネルディスカッション 循環器6 負荷心臓超音波検査の活かし方・落とし穴(症例ベース)

(S280)

心筋症に対する負荷心エコー図の実際:simple stress echocardiography

The practical approach of stress echocardiography for patients with cardiomyopathy:simple stress echocardiography

松本 賢亮, 平田 健一

Kensuke MATSUMOTO, Ken-Ichi HIRATA

神戸大学医学部付属病院循環器内科

Department of Internal Medicine Division of Cardiovascular Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine

キーワード :

“The art of medicine is in observation” William Osler
William Osler博士が19世紀にすでに述べておられるように,『医学の本質は観察科学である』ということに関しては,誰も異論ははさまないであろう.しかし,科学的な観察の仕方には『二つの方法がある』ということを意識しているものは必ずしも多くはないのではないだろうか.つまり,一つ目の方法は対象物をじっと根気よく観察し,その一挙手一投足を凝視し,その特徴を記載する科学的手法である.そしてもう一つの方法が,対象に対して何らかの働きかけを行い,その反応を観察し,分析し,そして記述する学問体系である.自然に対して能動的に問いかけることにより,「この反応は正常では必ず出る」,「この反射は正常でも出ない場合がある」,「この反応が出現する場合は多くの場合異常である」などという事実を観察する立場である.これを心臓超音波学に当てはめれば,前者が安静時心エコー図検査であり,後者が負荷心エコー図検査である.これらは車の両輪のように,いずれが欠けても十分な『観察』ができないのである.
 心臓は日々dynamicに変化している.外的な刺激に即応し,循環系の恒常性を維持すべく,血液循環はこの瞬間もまさしく『変化』し続けている.仮に,この変化する能力こそが血液循環の本質であると考えるならば,何らかの負荷により心臓に問いかけを行い,そこで起こる変化に耳をすませることは,眼の前の心臓の性質を顕在化させる最も優れた方法とは考えられないだろうか.
 しかし現状はどうだろうか?これまで,少なくとも学術集会の場や論文誌上では,心臓病患者に対する負荷エコー図検査の重要性が繰り返し叫ばれてきたものの,未だ日々の臨床現場には広がっていない.むしろ,その重要性が強調されればされるほど,逆説的に負荷検査が日常臨床の現場からどんどん遠ざかっている印象さえ覚える.確かに,負荷検査はその侵襲性や合併症などの危険性,さらには検査結果の解釈法や再現性への懸念など多くの問題を抱えている.しかし,一番の問題はその煩雑さであろう.本講演では,心筋症患者を中心に比較的シンプルな負荷法を用いて,時間をかけずに血行動態に揺さぶりをかけ,循環動態をあぶり出す負荷検査法に絞って概説したい.William Osler博士はこうも述べておられます.
“The value of experience is not in seeing much, but in seeing wisely” William Osler
 負荷に対する心臓の反応を賢く観察し,明日からの日々の臨床に生かしませんか?