Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 循環器
パネルディスカッション 循環器6 負荷心臓超音波検査の活かし方・落とし穴(症例ベース)

(S279)

奇異性低流量低圧較差大動脈弁狭窄症に対する負荷心エコー図法

Stress echocardiography in patients with paradoxical low flow low pressure gradient severe aortic stenosis

竹内 正明

Masaaki TAKEUCHI

産業医科大学病院臨床検査・輸血部

Department of Laboratory and Transfusion Medicine, University of Occupational and Environmental Health, School of Medicine

キーワード :

大動脈弁狭窄症に関する最近のトピックスの一つとして,奇異性低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄症という概念の提唱,その病態,予後に関する論争が挙げられよう.欧米では,奇異性低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄症は,重症大動脈弁狭窄症のより進行したタイプであり,左室肥大あるいは求心性モデリングを伴う拘束型障害を呈し,内科的予後は極めて不良であるため,外科的,経皮的大動脈弁置換術が唯一の予後改善の方法であるとの報告が多い.しかし患者の大部分は症候性であり,左室駆出率の保たれた心不全 と極めて類似した患者背景を有していることがわかる.一方本邦の奇異性低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄症は無症状の症例が多く,その予後は必ずしも悪くないとの印象を筆者はこの数年来ずっと持ち続けている.欧米の報告と,本邦の報告が異なる理由としては,患者背景が異なること.圧回復現象の程度が異なることに加えて,偽性重症大動脈弁狭窄症の頻度が異なることが考えられる.1 偽性重症大動脈弁狭窄症とは大動脈弁狭窄症が軽度から中等度であるにもかかわらず,血流量が低下しているため,大動脈弁口が最大限に開放できず,大動脈弁口面積が重症基準を満たしてしまう大動脈弁狭窄症のことであり,左室駆出率が低下した大動脈弁狭窄症の中に混在していることが最初に報告された.この古典的偽性重症大動脈弁狭窄症を真性重症大動脈弁狭窄症と鑑別するには,ドブタミン負荷心エコーを施行し,血流量を増加させ,その際の圧較差,弁口面積の変化から鑑別する方法が提唱された.しかしドブタミン負荷時の血行動態の変化は患者ごとに異なるため,それを統一化する方法として,血流量が250mL/s時の弁口面積が1.0cm2以上である場合を偽性重症大動脈弁狭窄症,1.0cm2未満の場合を真性重症大動脈弁狭窄症とする投射大動脈弁口面積(projected AVA)の概念が提唱された.具体的にはドブタミン負荷時,各ステージにおける弁口面積と血流量の関係をプロットし,回帰直線から血流量が250mL/s時の弁口面積を推定する.本方法は左室駆出率が正常の低圧較差大動脈弁狭窄症にも適応できる.Pibarotらは奇異性低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄症患者に低容量ドブタミン負荷心エコーを施行し,対象患者の約1/3は偽性大動脈弁狭窄症であり,偽性大動脈弁狭窄症の予後は真性奇異性低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄症より良かったことを報告している.
実際にこの方法を本邦の奇異性低流量低圧較差大動脈弁狭窄症に適応して見ると,プロットする点は250mL/s以下の部分に集まり,ここから回帰直線を引くことはできるが, 果たしてこの患者の血流量が250mL/sを超えるような状況が日常生活の中で起こるのかどうかは甚だ疑問な感覚を受ける.本セッションでは奇異性低流量低圧較差重症大動脈弁狭窄症に対する低容量ドブタミン負荷心エコーの実際とその問題点につき概説したい.
参考文献
1. 竹内正明 奇異性低流量低圧較差重症ASを見直す 心エコー 2017;18:854-865