英文誌(2004-)
特別プログラム・知を究める 循環器
パネルディスカッション 循環器5 ERで求められる心血管超音波検査
(S274)
呼吸困難例でのERエコー
Ultrasound Tests in the Emergency Room in Patients with Dyspnea
阿部 幸雄
Yukio ABE
大阪市立総合医療センター循環器内科
Department of Cardiology, Osaka City General Hospital
キーワード :
救急現場でhand-held echo機やportable echo機を用いて行う心血管系の焦点的超音波検査はfocused cardiac ultrasound(FoCUS)などと呼ばれ,身体所見診察を補助するために限られた範囲が焦点的・集中的に検査される.循環器救急の現場では,ショックおよび胸痛,呼吸困難を呈する疾患の鑑別診断,それらに伴う重要な合併症の診断のために必要最低限の項目を検査することになる.FoCUSを短時間で必須項目を忘れずに施行するためには,プロトコルを覚える努力をしてもよいが,鑑別診断や循環動態を常に考える習慣を身につけておけばプロトコルを知らなくても対応できる.また,FoCUSによる診断の後,治療方針の決定に至るためには,もう少し詳細なエコー評価が必要となることも多い.初期診断においては救急処置を邪魔しないように短時間でのFoCUSを行い,その後病状的にも時間的にも余裕ができてから詳細な評価に移ればよい.急性の呼吸困難を訴えて来院した救急患者の原因疾患としては心不全が最も多い.しかし,肺血栓塞栓症等,他の疾患が原因である可能性も念頭において診断しなければ致命的な見落としをしてしまう可能性がある.心不全例では,基礎心疾患の診断のみならず前方障害および後方障害の程度,そして,機能性僧帽弁逆流の有無と程度,これらの評価が治療方針の決定のために重要となる.