Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 循環器
パネルディスカッション 循環器1 Onco-Cardiologyにおける心血管超音波検査の活用法

(S260)

担癌患者における癌種別の深部静脈血栓症有所見率とDダイマー値の検討

Relationship between Prevalence of Deep Vein Thrombosis and Plasma D-Dimer Levels Depending on Cancer Type

鳥居 裕太, 山田 博胤, 西尾 進, 松本 力三, 平田 有紀奈, 天野 里江, 西條 良仁, 坂東 美佳, 楠瀬 賢也, 佐田 政隆

Yuta TORII, Hirotsugu YAMADA, Susumu NISHIO, Rikizo MATSUMOTO, Yukina HIRATA, Rie AMANO, Yoshihito SAIJO, Mika BANDO, Kenya KUSUNOSE, Masataka SATA

1徳島大学病院超音波センター, 2徳島大学大学院医歯薬学研究部地域循環器内科学, 3徳島大学病院循環器内科

1Ultrasound Examination Center, Tokushima University Hospital, 2Department of Community Medicine for Cardiology, Tokushima University Graduate School of Biomedical Sciences, 3Department of Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital

キーワード :

【背景】
癌患者は,非癌患者に比べて,深部静脈血栓症(DVT)のリスクが高いことが知られている.DVTを早期に診断,治療することで,致死的にもなる肺血栓塞栓症を未然に防ぐことができる.臨床において,DVTのスクリーニングには,臨床症状およびDダイマーが頻用されている.しかしながら,癌の存在自体がDダイマー値上昇の要因となるため,癌患者におけるその有用性については疑問視されている.また,癌種によりDVTの有所見率は異なることが報告されている.本研究の目的は,自験例において下肢静脈エコー検査によるDVT有所見率とDダイマー値を比較し,癌種別に検討することである.
【方法】
平成25年1月から平成28年10月の間に,Dダイマー高値,下肢腫脹などで徳島大学病院超音波センターに下肢静脈エコー検査の検査依頼があった3216例のうち631例の癌患者を対象として,後ろ向き研究を行った.下肢静脈エコー検査でDVTの評価が困難であった例は除外した.日本超音波医学会が提唱する下肢深部静脈血栓症の標準的超音波診断法に基づき,安静時および静脈圧迫法と血流誘発法(呼吸負荷法とミルキング法)によりDVTの有無を評価した.Dダイマー値は下肢静脈エコー検査の施行前1週間以内に測定された値を用いた.
【結果】
癌患者631例中,160例(25.4%)にDVTを認めた.DVT有所見率は,膀胱癌(6例中4例,66.7%),脳腫瘍(13例中8例,61.5%),骨腫瘍(6例中3例,50.0%)の順で高く,いずれの癌種でも10%以上の頻度でDVTを認めた.Dダイマー値は,骨腫瘍(11.9±7.5μg/ml),膀胱癌(10.7±7.0μg/ml),肺癌(8.8±10.4μg/ml)の順で高かった.Dダイマー値はDVT(+)群で有意に高値であった(4.4±6.9μg/ml vs. 8.1±8.7μg/ml,p<0.001).しかし,DVT(−)群においてもDダイマーは基準値(<0.5μg/ml)より高値であった.
【結果】
癌患者では,癌細胞増殖による血液過凝固状態や内皮細胞の血栓性の増強,腫瘍による血流の鬱滞がDVT発症の要因と考えられるが,DVT有所見率およびDダイマー値は癌種により異なることが示唆された.癌患者では,DVTの有無に関係なくDダイマーが高値であり,DVTの早期発見には下肢静脈エコー検査が有用と考えられた.