Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 循環器
パネルディスカッション 循環器1 Onco-Cardiologyにおける心血管超音波検査の活用法

(S259)

心エコー法による小児がん治療後心機能障害の早期検出

Early detection of cardiac dysfunction after childhood cancer therapy by using echocardiography

重光 幸栄, 高橋 健, 矢崎 香奈, 小林 真紀, 山田 真梨子, 玉一 博之, 藤村 純也, 齋藤 正博, 板谷 慶一, 清水 俊明

Sachie SHIGEMITSU, Ken TAKAHASHI, Kana YAZAKI, Maki KOBAYASHI, Mariko YAMADA, Hiroyuki TAMAICHI, Jyunya FUJIMURA, Masahiro SAITO, Keiichi ITATANI, Toshiaki SHIMIZU

1順天堂大学小児科, 2川崎協同病院小児科, 3京都府立医科大学心臓血管外科

1Pediatrics, Juntendo University, 2Pediatrics, Kawasaki Kyodo Hospital, 3Cardiovascular and Pediatric Cardiovascular Surgery, Kyoto Prefectural University of Medicine

キーワード :

【はじめに】
小児がん患者の生存率は近年増加している.抗がん剤アントラサイクリン・放射線療法による心不全は,小児がん治療終了後も経年的に増加し,生命予後を左右する.従来の心エコーによる化学療法後心毒性は,Ejection fraction(EF)で定義されていたが,EF低下後は抗心不全療法効果のある者は一部であり,大多数は改善に乏しい.2014年米国・2016年欧州心臓病学会からは,スペックルトラッキング法による左室長軸方向ストレイン(Longitudinal strain: LS)による心機能評価も追加され,化学療法後心機能障害の早期検出が重要課題となる.
【目的】
ストレインを内層・中層・外層に分けた層別ストレイン,また拡張早期に生じる僧帽弁から心尖部間に発生する拡張能の指標である,拡張早期左室内圧較差(Intraventricular Pressure Gradient: IVPG)を用いて小児がん治療後の心機能障害の早期検出を目的とした.
【対象と方法】
小児がん治療後群(C群)約50名と,同年齢の正常対照群(N群)約50名を比較した.小児は年齢により正常値が異なる為,年齢毎に両群を分類した.層別ストレインは,内層・中層・外層の層別と,さらに心基部・乳頭筋部・心尖部の部位別に分けた.IVPGは,心基部から2/3の心基部IVPGと,心尖部1/3の心尖部IVPGに分けた.超音波は,GE社のVivid E9を用い,EchoPACを用いて解析を行った.
【結果】
EF, 通常のストレインなど従来の心エコー指標は,全年齢で両群間に有意差が無かった.層別ストレインは,若年群では両群に有意差は無かったが,年齢が大きくなるにつれて,円周方向ストレイン(Circumferential strain: CS)は,内層CS→中層CSの順で,また心基部CS→乳頭筋部CS→心尖部CSの順で,C群がN群に比較し有意に低下していた.一方,LSは,内層・中層・外層共に全年齢で両群間に有意差は無かった.IVPGは,若年群では両群間に有意差は無かったが,年齢が大きくなるにつれて,C群がN群に比較し有意に低下していた.さらに,心尖部IVPGは全年齢でC群がN群に比較し有意に低下していた.一方,心基部IVPGは全年齢で両群間に有意差は無かった.
【考察】
アントラサイクリンによる心筋細胞障害が内層から生じることが動物実験で確認されており,層別ストレインで内層CSから低下していた結果は,心筋の内層障害を早期に反映しているものと考えられた.部位別ストレインで心基部CSから低下していた理由は,Laplaceの法則により,半径の大きく心筋の薄い心基部で負荷大となるからだと考えらえた.またLSが全年齢で両群間に有意差が無かった理由は,心筋内層側では長軸方向の心筋線維走行が少ないためであると考えらえた.IVPGは,心基部IVPGは前負荷の影響を受けるが,心尖部IVPGは前負荷の影響を受けにくい.心尖部IVPGが,全年齢でC群がN群と比較し有意に低下していた理由は,前負荷に影響されない真の拡張能障害を反映しているものと考えられた.
【結論】
小児がん治療後は,層別ストレインCSは,年齢が大きくなるにつれて,心内膜側から心外膜側の順で低下していた.IVPGは,年齢が大きくなるにつれて,C群がN群と比較し有意に低下し,さらに心尖部IVPGは,全年齢でC群がN群と比較し有意に低下していた.これらの指標は,心エコーにおける小児がん治療後心機能障害の最も早期検出の指標となり得ると考えられる.