英文誌(2004-)
特別プログラム・知を究める 循環器
パネルディスカッション 循環器1 Onco-Cardiologyにおける心血管超音波検査の活用法
(S258)
アントラサイクリン系抗癌剤による化学療法関連心筋障害の局在性評価
Localization of Myocardial Injury in Anthracycline-induced Cardiotoxicity
西條 良仁, 楠瀬 賢也, 坂東 美佳, 瀬野 弘光, 西尾 進, 平田 有紀奈, 鳥居 裕太, 天野 里江, 山田 博胤, 佐田 政隆
Yoshihito SAIJO, Kenya KUSUNOSE, Mika BANDO, Hiromitsu SENO, Susumu NISHIO, Yukina HIRATA, Yuta TORII, Rie AMANO, Hirotsugu YAMADA, Masataka SATA
1徳島大学病院循環器内科, 2徳島大学病院地域循環器内科学, 3徳島大学病院超音波センター
1Cardiovascular Medicine, Tokushima University Hospital, 2Community Medicine for Cardiology, Tokushima University Hospital, 3Ultrasound center, Tokushima University Hospital
キーワード :
【目的】
アントラサイクリン系抗癌剤による左室心筋障害の局在性を評価し,遅発性化学療法関連心筋障害(CTRCD)との関係を検討すること.
【方法】
アントラサイクリン系抗癌剤の投与前後に経胸壁心エコー図検査を施行した87例(58±14歳,男性32例)を対象とした.内訳は乳癌38例,悪性リンパ腫28例,多発性骨髄腫6例,その他15例であった.抗癌剤投与直後にCTRCDを発症した症例,中等度以上の弁膜症,検査時に心房細動,画像不良例は除外した.2次元スペックルトラッキング法を用いてglobal longitudinal strain(GLS),apical LS, mid LS, basal LSのpeak値(絶対値)を求め,各々の抗癌剤投与前後の変化率ΔGLS,Δapical LS, Δmid LS, Δbasal LSを評価した.その後,心エコー図検査でフォローアップ可能であった47例で,左室心筋障害の局在性と遅発性CTRCDとの関係を検討した.
【結果】
抗癌剤投与開始から投与開始後の初回心エコー図検査までの観察期間中央値は98日.抗癌剤の投与前と比較し,投与後の左室駆出率(65±4% vs. 64±4%, p=0.004), GLS(23.3±2.6% vs. 22.2±2.4%, p =0.005)およびbasal LS(21.9±2.5% vs. 19.9±2.4%, p <0.001)に有意な低下を認めた.フォローアップ可能であった46例のうち8例(17%)で遅発性CTRCD発生を認め,単変量解析の結果,Δbasal LSが遅発性CTRCDの予測因子であった.抗癌剤の投与前後でbasal LSが15%以上低下した群は,しなかった群と比べ遅発性CTRCDの発生を有意に多く認めた(p=0.002, figure).
【結論】
アントラサイクリン系抗癌剤の投与直後にCTRCDを発症しなかった例において,投与直後のbasal LSは有意に低下しており,遅発性CTRCDの発症に関連していた.