Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 0.677(2017年)→0.966(2018年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 循環器
シンポジウム 循環器4 心不全診療における心臓超音波検査の活かし方

(S256)

下肢陽圧負荷装置を用いた心不全患者に対する前負荷予備能評価と,その臨床応用可能性

Assessment of preload reserve during non-invasive dynamic preload stress echocardiography enhances risk stratification of patients with heart failure

松本 賢亮, 楠瀬 賢也, 山田 博胤, 平田 健一

Kensuke MATSUMOTO, Kenya KUSUNOSE, Hirotsugu YAMADA, Ken-Ichi HIRATA

1神戸大学医学部付属病院循環器内科, 2徳島大学医学部付属病院循環器内科

1Department of Internal Medicine Division of Cardiovascular Medicine, Kobe University Graduate School of Medicine, 2Department of Internal Medicine Division of Cardiovascular Medicine, Tokushima University Graduate School of Medicine

キーワード :

【背景】
比較的ハイリスクの心不全患者群を効果的に拾い上げることは,治療の強化や最適化,さらには限られた医療リソースの集中的投入による医療全体のコスト低下に寄与することとなる.心エコー図法を用いた心機能評価は,これまで心不全患者のリスク層別化に貢献してきたことに関して異論はない.しかし多くの心不全患者においては,仮に安静時の血行動態指標が保たれていたとしても,その血行動態的異常は負荷条件下において初めて顕在化する.近年開発された下肢陽圧負荷装置を用いた急性前負荷増大負荷(leg-positive pressure: LPP)心エコー図法は非侵襲的にかつ総体液量を一切変化させることなく “volume central shift”を再現し,慢性心不全患者の前負荷予備能を明らかにすることができる.ここで,前負荷予備能とは増大した前負荷に対し“心室充満圧を上昇させることなく前方駆出量を増大させる能力”であるであると定義するならば,これは心血管系予備能の本質と解釈することができる.
【方法】
120名の収縮能の低下した慢性心不全患者(HFrEF)を前向きに登録し,LPP負荷の前後での前方駆出量と拡張期充満圧の変化を測定した.これらの患者において,負荷エコー中の測定値を得た後,平均20ヶ月間心血管イベントの有無を前向きに調査した.イベントは心不全死,心臓突然死および心不全再入院を合わせた複合エンドポイントとした.
【結果】
20ヶ月間の観察期間中30名の患者において心血管イベントが発生した.急性前負荷増大負荷において,イベントを起こさなかった群では拡張期充満圧の指標であるE/e’の著明な増悪を伴わずに(16±10 to 17±9, p<0.05)前方拍出量(SVi: stroke volume index)を増大させることができた(39±12 to 44±14 ml/m2, p<0.001)が,イベント群においてはFrank-Starling機構が高度に障害され(SVi: from 38±11 to 37±12 ml/m2),かつE/e’値は負荷により著明に上昇した(19±11 to 25±14, p<0.001).Cox比例ハザードモデル解析では,負荷中のSVi変化量(HR: 0.41 per 5 ml/m2 increase, p<0.001)およびE/e’の変化量(HR: 2.52 per 5-unit increase, p<0.001)がそれぞれ将来の心血管イベントの独立した規定因子となることが示された.
【結論】
LPP負荷法による前負荷予備能評価は,慢性心不全患者の予後層別化に有用であることが示された.