Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 循環器
シンポジウム 循環器3 超高齢化社会における心臓超音波検査の役割

(S252)

高齢者における運動負荷心エコー図

Stress echocardiography in the elderly patients

髙木 力

Tsutomu TAKAGI

高木循環器科診療所

Cardiology, Takagi Cardiology Clinic

キーワード :

高齢者においては労作時呼吸困難や胸部症状はよくある訴えである.冠動脈疾患,弁膜症,心筋症などの心疾患や左室駆出率が保たれた心不全がその原因となりうる.それらを鑑別診断するためには安静時心エコー図検査だけでは不十分であり,運動負荷心エコー図検査を実施する必要がある.当診療所では2005年からトレッドミル負荷心エコー図検査で左室壁運動異常の診断に加えて,左室流入血速度Eと僧帽弁弁輪部移動速度e’の比(E/e’)を測定する,いわゆるdiastolic stress echoを実施している.負荷後E/e’(中隔側)15以上を認める時に左室拡張期圧上昇と診断している.2005年1月から2017年12月までの13年間に65歳以上の高齢者,延べ615例に対してトレッドミル負荷心エコー図を実施した(延べ265例が75歳以上であった).
安静時左室壁運動異常を認める症例,弁膜症例,運動負荷後に左室壁運動異常の出現を認める症例や非洞調律例を除外して検討すると,運動負荷後にE/e’15以上を認める症例の割合は37%(年齢73±5歳)から50%(年齢75±6歳)であり,75歳以上に限って検討すると(年齢78±3歳),運動負荷後にE/e’15以上を認める症例の割合は63%であった.
75歳以上の症例(年齢78±3歳)について運動負荷心エコー図の予後予測能について検討すると,負荷後左室壁運動異常の出現は心血管イベント(心血管死,心筋梗塞,脳梗塞)などの予測に有用であった(Longrank p = 0.0006).負荷後E/e’高値は心血管イベントについは有意差を認めなかったが(Longrank p = 0.9206),新規心房細動の出現の予測には有用であった(Longrank p = 0.0429).
高齢者においては整形外科的問題のため運動負荷が実施困難なことも多い.当診療所における検討(年齢75±6歳)では,E/e’高値群は正常群と比較して安静時diastolic wall strain(DWS)が小(0.33±0.05 vs 0.45±0.06,p < 0.0001)で安静時global longitudinal strain(GLS)が小(-16.7±2.7% vs -19.3±2.6%,p < 0.0001)であった.運動負荷が実施困難な症例においては安静時DWSやGLSがdiastolic stress echoの代用となる可能性がある.
結語 高齢者における運動負荷心エコー図は心血管イベントや新規心房細動の予測に有用である.