神崎 秀明, 濱谷 康宏, 岡田 厚, 天木 誠, 長谷川 拓也

Hideaki KANZAKI, Yasuhiro HAMATANI, Atsushi OKADA, Makoto AMAKI, Takuya HASEGAWA

国立循環器病研究センター心臓血管内科

Cardiovascular Medicine, National Cerebral and Cardiovascular Center

キーワード :

【目的】
左室の逆リモデリングは心臓再同期療法（CRT）の長期予後の強力な予測因子である．左房もCRT後に逆リモデリングを認めることは報告されているが，その詳細については，不明なこともある．本研究の目的は，左房容積とCRTの予後の関係について明らかにすることである．
【対象】
CRTが行われた洞調律，左室収縮不全の心筋症患者170例（年齢62±14歳，LVEF23±8％，QRS 167±38 ms）．
【方法】
心エコーの各種パラメータについてはCRT前とCRT6ヶ月後で評価し，長期予後との関連について検討した．左房容積は体表面積で補正した左房容積係数（LAVi）で評価した．
【結論】
LAViは59±21 ml/m² から6ヶ月後に53±23 ml/m²へと6.7％減少した（P=0.016）．LAViの減少は，CRT6ヶ月後のNYHA1度以上の心不全症状の改善（ROC area 0.795）や左室の逆リモデリング（ROC area 0.814）と密接に関係していた．Kaplan-Meier曲線では，CRT6ヶ月後のLAViが10％以上減少した群では，明らかに長期の生命予後が良好であった（Log-rank P＜0.001）．
【結語】
CRT6ヶ月後の左房の逆リモデリングは，CRT効果における長期予後の予測因子であった．左房容積は，左室収縮不全患者において，心不全治療の長期予後の代替指標として有用と考えられる．