久保 俊介, 丸尾 健, 門田 一繁

Shunsuke KUBO, Takeshi MARUO, Kazushige KADOTA

倉敷中央病院循環器内科

Department of Cardiology, Kurashiki Central Hospital

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心原性脳梗塞は心房細動の最も重篤な合併症の一つである．これまでワルファリンや新規抗凝固薬による抗凝固療法が心原性脳梗塞のスタンダードな予防法であったが，近年，心原性脳梗塞の主な塞栓源である左心耳をデバイスで閉鎖する経皮的左心耳閉鎖術が世界的に注目を浴びている．その中で最も使用され，エビデンスも蓄積されているのがWATCHMANデバイス（Boston Scientific社）である．2014年にPROTECT-AF試験の4年フォローアップの結果において，有効性に関する複合エンドポイントはデバイス群でワルファリン群と比較して有意に低下し，安全性に関する複合エンドポイントではデバイス群はワルファリン群と同等と報告され，2015年3月に「高リスク非弁膜症性心房細動の患者に対するワルファリン内服の代替治療」米国のFDAに認可された．WATCHMANデバイスは14Fr.のシースから経カテーテル的に留置する自己拡張型のナイチノールフレームのデバイスで，ポリエチレン製の膜が留置後45日までに内皮化することで，塞栓予防の役目を果たす仕組みである．デバイスサイズは21mm，24mm，27mm，30mm，33mmの計5種類あり，左心耳径によってサイズ選択を行う．WATCHMANデバイスの留置位置は左肺静脈分岐の1-2cm遠位部（ちょうど左心耳の櫛状筋による肉柱構造がなくなるレベル）と左回旋枝レベルの左心耳壁を結んだラインと想定される．主要Lobeの左心耳径と深さを経食道心エコーの0度，45度，90度，135度の4方向で計測し，その左心耳の最大径より20％（もしくは4mm）以上大きいサイズのデバイスを選択する．手技の中では，まず心房中隔穿刺を行い左房へアプローチするが，経食道心エコーのガイド下に心房中隔の後ろ側，低めを穿刺することによりスムーズに左心耳にカテーテルを挿入することができる．デバイスの留置は透視画像を見ながらエコー画像を補助として用いるが，留置後のデバイス位置が適切どうかにおいては，経食道心エコー下で3点チェックする必要がある．まず左心耳の中におけるデバイス位置の確認，カラードップラーでWATCHMANデバイスの周囲にリークがないかの確認，そして留置されたデバイスの径の計測でデバイスが左心耳に圧迫され既定のサイズよりも小さくなっていることの確認である．デバイスの留置後には心嚢液貯留がないかを確認する必要がある．WATCHMANデバイス留置後は通常45日後に経食道心エコーを行いデバイス周囲リークとデバイスに血栓がついていないかを確認する．この所見でデバイス周囲のリークが5mm以下でデバイスに血栓がついてなければ，抗凝固療法を中止する．以上のように，経カテーテル左心耳閉鎖術の術前，術中，そして術後慢性期のフォローアップに経食道心エコーによる評価は不可欠なものである．エコーの実際を供覧し，より良いデバイス留置手技やマネージメントについて議論したい．