高谷 陽一

Yoichi TAKAYA

岡山大学循環器内科

Cardiovascular Medicine, Okayama University

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心房中隔欠損症（atrial septal defect：ASD）は成人期において最も頻度の高い先天性心疾患である．従来は外科的手術しか選択肢がなかったが，2005年から二次孔型ASDに対してカテーテル閉鎖術が開始され，侵襲性の少ないカテーテル閉鎖術はほとんどの症例で第一選択となり，治療対象は高齢者に至るまで幅広い年齢層となってきている．
ASDカテーテル閉鎖術を行ううえで，心エコー図は極めて大きな役割を担っている．
心エコー図で評価すべき項目として，まずASDの存在の診断，ASD形態の評価，さらに重症度（肺体血流比，右心拡大，肺高血圧症，左心機能）や合併器質的心疾患の評価などが挙げられる．
ASDカテーテル閉鎖術中，経食道心エコー図による正確かつ詳細な評価は，治療の安全な実施と確実な成功に直結するため，非常に重要である．ASDはさまざまな形態を呈しており，欠損孔の個数（単孔または多孔なのか），径，形態，位置，周囲縁rimを評価する必要がある．なかでも，欠損孔の最大径を正確に診断することは，カテーテル治療において適正サイズのデバイスを選択するうえで最も重要である．適正サイズよりも大きいデバイスを選択してしまえば，心房壁や大動脈壁への過度の圧迫によって致死的な合併症である心穿孔（erosion）を引き起こす危険性があり，また小さいデバイスを選択すればデバイス脱落につながる．Rim評価も重要であり，後壁や下大静脈rim欠損ではデバイスが脱落するリスク，大動脈や上壁rim欠損ではデバイスが左房や壁を過度に圧排しerosionを引き起こすリスクがあり，注意を要する．デバイス留置時は，デバイスが確実に中隔を挟んでいるか，適切な位置に留置されているか観察することが大切である．
今回，ASDカテーテル閉鎖術における心エコー図評価の重要なポイントについて，特に注意を要する症例を含めて発表する．