濱口 浩敏

Hirotoshi HAMAGUCHI

北播磨総合医療センター神経内科

Department of Neurology, Kita-harima medical center

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　頸動脈エコーにおけるIMT計測は，検査を行う際に必ず計測する項目の一つである．その理由としては，加齢性変化，動脈硬化の評価を行う際に見た目でわかりやすく，患者に説明しやすい点，降圧薬やスタチン，抗血小板薬などによる治療効果判定に使用できる点などに有用性が高いとされているが，IMT値の精度自体についてはあまり議論されていない．実際の現場では，装置に備えつけられたトラックボールを用いてIMT計測を行う施設が多いが，例え明瞭な画像を描出できたとしても，検者の技量のみならず装置，設定条件，視野深度，プローブ選択，プローブ形状，トラックボールのなめらかさなどに様々な要因よって数値が容易に変化する．これら主観的な操作での数値ではなく，客観性を持たせる方法としてtrace法やWindows上で行う自動計測ソフトなどがあるが，いずれも一般的に普及しているわけではなく，その精度についても明瞭な画像を提示することが最低条件といえる．IMTファントムモデルを用いて超音波装置におけるIMT手動計測および自動計測を行い，IMTの精度管理に対して検討した結果では，max IMT，mean IMTともばらつきが見られていた．このことは，もちろんファントムの精度による誤差という問題もあるが，日常診療で用いられている超音波装置において，装置の性能に差はあれ，IMT計測には装置間差が存在する点を理解する必要がある．
　超音波装置間でのIMT自動計測において数値差がでる理由としては，各装置固有の条件，輝度変化の解析に対する閾値，計測ポイント数，trace幅などが要因として考えられる．IMTの精度向上におけるもっとも重要な点は，いかにきれいな画像で，輝度変化の境界面が明瞭に分かれている画像を描出できるかという手技的向上に尽きる．しかし，ばらつきのない値に近づけるための工夫としては各装置の性能を把握し，その装置による数値を規定し，各装置の固有値として把握しておくことと考える．そのためには，ファントムの統一化，ファントムの精度向上，定期的なデータ解析などが重要になると考える．それらを加えることにより，本当に臨床で必要なIMT値の担保ができるようになることを期待する．