Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 基礎
シンポジウム 基礎7 超音波医学におけるAI研究の現状と展望

(S233)

Deep Learning手法を用いた乳房超音波コンピュータ診断支援の試み

Computer-aided diagnosis in breast ultrasound images using deep learning method

山川 誠, 椎名 毅

Makoto YAMAKAWA, Tsuyoshi SHIINA

京都大学大学院医学研究科

Graduate School of Medicine, Kyoto University

キーワード :

【目的】
近年,人工知能(AI)の分野において深層学習(Deep Learning)の手法が開発されたことやビックデータが活用できるようになり,コンピュータによる画像認識の精度が格段に向上してきている.医療画像においても皮膚がんや大腸ポリープ診断に深層学習の手法を適用することで90%以上の精度が得られるといった報告もある[1].しかし,超音波画像に適用した報告は少なく,乳房超音波画像において良悪性鑑別を行った例で約82%の精度である[2].そこで,我々は乳房超音波画像を用いて良悪性鑑別だけでなく,腫瘍のタイプ診断まで行う畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を作成し,Deep Learningによる乳房超音波画像診断支援の可能性を評価した.
【方法】
乳房超音波画像としては症例数がある程度確保できた線維腺腫33例,充実腺管癌17例,硬癌33例,乳頭腺管癌25例の合計108症例のBモード画像を用いた.なお,今回は症例数が少ないため,テストデータ9症例,学習データ99症例となるようにし,交差検証法により精度を評価した.また,Deep Learningの手法としては,VGG Net[3]を基にしたCNNを用い,入力画像としては腫瘍が十分に入るように抽出した後,128×128画素に画像サイズ変換を行った.なお,作成したCNNは上記の4クラス分類のものと,これまでの報告との比較を行うために良悪性鑑別のための2クラス分類のものを作成した.
【結果】
まず,4クラス分類のCNNによる診断精度は52.8%(57/108)であった.これは学習データが99症例と非常に少ないためであると考えられる.少ない学習データで精度を向上させる方法としてデータ拡張法があり,これはオリジナルの画像の他に左右反転,拡大縮小,平行移動,輝度変換などを施した画像も学習データとして用いることで学習データを増やす方法である.そこで,次にオリジナル画像に左右反転画像を学習データに加えることでデータ拡張の効果を検証した.その結果,左右反転画像追加によるデータ拡張により診断精度は60.2%(65/108)と約7%向上した.なお,この4クラス分類の結果をもとに良悪性鑑別を行ったところ,正診率80.6%(87/108),感度81.3%,特異度78.8%であった.一方で,2クラス分類のCNNにて学習・交差検証を行った結果は,正診率87.0%(94/108),感度92.0%,特異度75.8%とこれまでの報告[3]に比べても高い正診率が得られた.ただし,特異度に関しては,良性腫瘍の症例が33例しかなかったために若干低い結果となった.
【結語】
本研究によりDeep Learningの手法を用いることで乳房超音波画像診断支援の可能性が示された.また,データ拡張に関しても十分な効果が得られることが確認された.今後,学習データを増やすことでさらなる診断精度向上が見込まれる.
【参考文献】
[1]A. Esteva, et al., Nature, 2017.
[2]JZ. Cheng, et al., Scintific Reports, 2016.
[3]K. Simonya, et al., ICLR 2015.