Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 基礎
シンポジウム 基礎6 高周波数超音波イメージングの現状と展開

(S230)

三次元超音波顕微鏡による皮膚微細構造の可視化

Visualization of microscopic structure of skin by three-dimensional ultrasound microscopy

横式 紗彩, 熊谷 和敏, 前田 萌, 池田 隼人, 西條 芳文

Saaya YOKOSHIKI, Kazutoshi KUMAGAI, Moe MAEDA, Hayato IKEDA, Yoshihumi SAIJO

東北大学医工学研究科

Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University

キーワード :

【目的】
皮膚は真皮と表皮の2つの層を有する.身体の部位によって厚さは異なるが,顔の皮膚は一般的に厚さ1.5 mm~2 mm程度といわれている.このため,真皮の全層を観察するにはOCTでは深達度が僅かに足りず,超音波イメージングは皮膚科学において簡便かつ有用な手法として期待されている.しかしながら,従来の20 MHzの皮膚用超音波イメージングは分解能が限られているため皮脂腺や毛包などの構造をはっきりと可視化する事ができなかった.本研究の目的は,75 MHzトランデューサーを備えた三次元超音波顕微鏡によって皮膚の皮脂腺の形態を可視化し,より深い層までの皮膚の形態及び構造を頬と額で比較することである.
【対象】
25~40歳の女性20名を対象に額と頬において三次元超音波顕微鏡測定を実施した.
【方法】
周波数75 MHzで空間分解能20μmを有する直径2.4 mm,焦点距離4 mmのPVDF-TrFE材料を有する凹面振動子をリニアモーターを用いて二次元走査し,三次元データを取得した.音響カプラとして臨床的に承認されているハードタイプの超音波ゲルを使用した.32μm間隔で幅4.8 mmのBモード画像を取得し,Image Jを用いて再構成したMPR画像によって皮脂腺を可視化した.Bモード画像のブレの補正にはFiji image jにおけるStack Regのtranslation機能を使用した.さらに,Image JのBrightness/Contrastをコントラストの調整に使用した.皮脂腺は皮脂腺断面積,個数,皮膚面積から皮脂腺平均サイズと皮脂腺占有率を算出し定量化した.
【結果および考察】
表皮について額は129μm,頬は73μmと額が頬より有意に厚く,真皮については頬が1358μm,額が1253μmと頬が額よりも有意に厚かった.皮膚は赤ちゃんから成人にかけて厚くなり,老化とともに薄くなっていくといわれているが,皮膚の厚さと25~40歳の年齢との間に有意な相関はなかった.頬と比較して額の皮膚表面は凹凸があり不規則であった.皮脂腺のコントラストについて額は頬に比べて悪かった.三次元画像の画質を改善するためには,被験者が動かないように注意する必要があると考えられる.年齢が上がるにつれて皮脂腺平均サイズは小さくなり,皮脂腺占有率も小さくなる傾向があった.今後の展望として,新しいフィルタリング処理,超音波とOCTとの融合によるハイブリッドイメージング,複数の同心円状センサーを有するアニュラーアレイ振動子の導入により,画質の改善を試みる予定である.