Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 基礎
シンポジウム 基礎6 高周波数超音波イメージングの現状と展開

(S229)

新たな超音波顕微鏡技術

Advanced Technologies for Ultrasonic Microscopy

穂積 直裕, 吉田 祥子

Naohiro HOZUMI, Sachiko YOSHIDA

1豊橋技術科学大学電気・電子情報工学系, 2豊橋技術科学大学環境・生命工学系

1Electrical & Electronic Information Engineering, Toyohashi University of Technology, 2Environmental & Life Sciences, Toyohashi University of Technology

キーワード :

【背景】
 光学顕微鏡による生体組織の観察は,医学生物学研究分野で頻繁に行われ,臨床医学においては生体組織診として確立されているが,通常染色操作が必要であり,生きた状態での観察には不向きである.超音波を用いると,染色を必要とせず,音速や特性音響インピーダンスなど,「硬さ」に関係する定量的な音響物性像が得られる.本稿では発表者らが提案している音響インピーダンス顕微鏡について概説する.
【観察法】
 プラスチック基板に生体組織や培養細胞を接触させ,接触面に焦点を結ぶように基板背面から超音波パルスを送受し,反射強度を特性音響インピーダンスに変換する.振動子を平面走査すると二次元像が得られる[1].
 音響インピーダンスがビーム奥行方向で一様でない場合,条件によっては,内部からの反射をもとにビーム奥に向かって各層の音響インピーダンスと反射係数を推定し,断面像或いは三次元の音響インピーダンス像を得ることが可能である[2].
【観察例】
 左図は,300 MHz程度を中心とする周波数帯で培養グリア細胞を観察したものである.取り扱う情報は二次元の音響インピーダンス列となる.細胞骨格の状態などを定量観察することができる.連続観察が可能であるため,抗癌剤などの薬液を投与する前後の変化を調べるなど,細胞の状態モニタリング手法として利用できると考えている.
 右図は80 MHz程度を中心とする周波数帯域で皮膚(ヒト頬)の断面を見たものである[2].上段は所謂Bモード像であり,皮膚の層構造を反映しているが,組織の同定には経験を要する.下段は音響インピーダンスに変換したもので,層構造が比較的明瞭に把握できる.解剖学的知見と整合した断面像が得られることから,皮膚の状態評価手法としての活用が期待できる.例えば乳頭層の厚さが同定可能で,加齢に従って薄くなることが確認できるなどの結果が得られている.
【まとめ】
 提案する手法は,非侵襲・非染色で生きた組織を連続観察可能であり,広帯域超音波の特性を生かした三次元音響物性像が取得可能などの利点を有するため,多くの研究者との議論により,改良と応用を進めたい.
【参考文献】
[1]Agus et al., Ultrasonics, 63, 102-110, 2015
[2]Tan et al., Jpn. J. Appl. Phys., 56, 07JF18, 2017.