Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 基礎
シンポジウム 基礎5 光と超音波の融合による定量診断・機能イメージング技術

(S225)

三次元超音波/光音響顕微鏡による皮膚微小血管の可視化

Visualization of skin microvasculature with three-dimensional ultrasound / photoacoustic microscope

西條 芳文, 長岡 亮, 岩﨑 秀明, 大室 俊之, 伊田 泰一郎, 吉澤 晋, 梅村 晋一郎

Yoshifumi SAIJO, Ryo NAGAOKA, Hideaki IWAZAKI, Toshiyuki OMURO, Taiichiro IDA, Shin YOSHIZAWA, Shinichiro UMEMURA

1東北大学大学院医工学研究科, 2株式会社アドバンテスト新企画商品開発室, 3東北大学工学研究科

1Graduate School of Biomedical Engineering, Tohoku University, 2STO Project, Advantest Corporation, 3Graduate School of Engineering, Tohoku University

キーワード :

【背景・目的】
高齢化社会の到来は先進国共通の問題となっており,がんや心血管疾患などの加齢性疾患に加えてエイジングにも大きな関心が注がれつつある.特に三大エイジング(脳,皮膚,頭髪)の一つである皮膚のエイジングに関して,2019年には131億ドルの市場規模が期待されている.皮膚のエイジングについて,表面の色やしわ,皮膚真皮のコラーゲンやエラスチンの質と量などが評価項目とされている.OCT(光干渉断層法)や皮膚用共焦点顕微鏡などの光学的手法は高分解能で皮膚の観察が可能であるが,深達度が0.5 mm程度にとどまり,皮膚の真皮層の観察に高周波数超音波も注目されてきた.さらに,皮膚の代謝をレギュレーションする微小循環も重要な評価項目であるが,従来は観察手法がなく十分な検討がなされていなかった.
光音響イメージングは,強い短パルス光が照射され熱膨張した対象から発生する超音波=光音響信号を検出することで,特に光を吸収しやすい構造体を可視化する手法である.本研究では高周波数超音波で皮膚の微細構造,光音響顕微鏡で皮膚の微小血管を観察可能な,三次元超音波/光音響顕微鏡を開発することを研究の目的とした.
【方法】
波長532 nm,パルス幅7 ns,パルスエネルギー19μJ/パルス,繰り返し周波数500 HzのNd:YAGレーザーを光源として使用した.中心周波数50~80 MHzのPVDF-TrFE製凹面振動子,あるいは中心周波数75 MHzの4段のアニュラアレイ振動子等により発生した光音響信号を受信した.それぞれの振動子の中央には600μmの光ファイバーを通し,レーザー光の照射と光音響信号の受信を同軸で行った.振動子をリニアモーターにより高速走査を行うことで,三次元データを取得した.
【結果および考察】
図は皮膚を表面から俯瞰した超音波画像(左上),光音響像(左下),それぞれの重畳表示(右)である.真皮の構造と血管網の関係が明瞭に表示されている.超音波による皮脂腺などの皮膚微細構造と皮膚バイオメカニクスの関連についてはすでに報告しており,今後,皮膚の微小循環とエイジングの関連が解明されることで,新たな観点から皮膚のスマートエイジング手法の開発が期待される.