Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 基礎
シンポジウム 基礎3 未開拓領域

(S216)

超音波によるリンパ管の「見える化」で実現する効率的・効果的なリンパ浮腫外科治療

Effective and efficient surgical treatment for lymphedema usingultrasound visualization technique of lymphatic vessels

林 明辰

Akitatsu HAYASHI

亀田総合病院乳腺科

Breast Center, Kameda Medical Center

キーワード :

【目的】
近年,がんサバイバーの増加に伴い,がん術後リンパ浮腫の患者数は約20万人と増加の一途を辿っている.リンパ浮腫に対する治療は,保存療法と外科療法に大きく分かれるが,保存療法に抵抗性のある場合は外科療法を選択することとなる.その中で最も多く行われているリンパ管細静脈吻合(LVA)という術式は,顕微鏡下において0.5mm前後のリンパ管と細静脈を吻合し,リンパ節廓清後に生じたリンパ液の鬱滞を解除する手術である.この術式においては,術前のリンパ管同定が重要であり,また数あるリンパ管の中から駆出能を有するものを選択することがポイントとなる.我々は,これまでに造影剤を用いずに超音波によるリンパ管の同定法を開発したが,今回,高周波超音波さらには最新の超高周波超音波を術前・術中に用い,手術に最適と考えられるリンパ管を選択し同定することが,術中術後の結果に影響を及ぼすか検討した.
【方法】
LVAを行った上下肢リンパ浮腫患者116名を対象に,術前術中に超音波を用いリンパ管を同定した群(US群, 68名)と用いず同定しなかった群(non-US群, 48名)に分類した.両群間において,手術時間や術後体積減少率などを比較検討した.
【結果】
US群において有意に,より径の大きいリンパ管を同定でき,さらには手術時間の短縮,体積減少率の増大を認めた.また,この研究過程においてリンパ管の新たな超音波所見が得られた.
【考察】
本研究では,術前・術中にリンパ駆出能を有するリンパ管を同定・選択することで,より効率的効果的なLVAが可能となることが示された.また,最新の超高周波超音波を用いることで,従来の高周波超音波では同定困難であった,0.3mm以下のリンパ管の同定が可能となった.さらには,リンパ浮腫の進行に伴うリンパ管周囲の変性を捉えることが可能であることも示唆された.今後は,最新の超高周波超音波を用いることで,リンパ浮腫手術さらにはその他の微小手術に関連する様々なミクロ的評価が,より低侵襲に正確にできる時代が到来すると考える.