Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 領域横断
パネルディスカッション 領域横断2 改めて問う携帯超音波の位置づけと問題点

(S204)

高齢者診療における携帯超音波の役割

How to use “pocket-sized US" when caring elder patients

長沼 裕子, 石田 秀明, 小川 眞広, 山中 有美子, 船岡 正人, 藤盛 修成, 長井 裕, 大野 長行, 山崎 延夫

Hiroko NAGANUMA, Hideaki ISHIDA, Masahiro OGAWA, Yumiko YAMANAKA, Masato FUNAOKA, Shusei FUJIMORI, Hiroshi NAGAI, Nagayuki OHNO, Nobuo YAMAZAKI

1市立横手病院消化器科, 2秋田赤十字病院消化器科, 3日本大学病院消化器肝臓内科, 4NGI研究所, 5GE Healthcare, 6富士フイルムメディカル株式会社超音波事業推進部

1Department of Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 2Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, 3Department of Gastroenterology and Hepatology, Nihon University Hospital, 4New Generation Imaging Laboratory, 5GE Healthcare, 6FujiFilm

キーワード :

携帯超音波は市販されてから7年以上経過し,その位置づけもかなり明確になりつつある.ここでは,腹部領域に限定し,携帯超音波の現状を再検討してみた.
使用診断装置:V scan(GE Healthcare), SonoSite iViz(Fujifilm), Fujikin(Fujikin Soft).これに関しては,当初, ほぼV scan single(sector)probeのみであったが,多くのメーカーから多彩な装置が発売されるまでになっている.V scanに関しても高周波linear probeを対側に装着したdual probeの出現,など,浅部をカバーする事も可能となってきている.
利用範囲(現状):当初,対象臓器は主に心臓であったが,腹部領域でも“有用かもしれない”という印象から,その後の発展が始まった.腹部領域でも,当初は救急外来での利用が想定されたが,現在では,a)病棟回診,b)外来診療,c)往診,など,利用範囲は広がりつつある.要は,問診,触診,打診,聴診,に,エコー診,を加える,といった考えを医師間に根付かせられるか,にかかっている.b)外来診療の一環として,携帯超音波のエコー診を行う利点として,患者振り分けの初期対応が迅速に行える事が挙げられる.特に,消化器外来に腹部症状で受診する患者の約1/3程度は他領域疾患(循環器(狭心症,心筋梗塞,大動脈瘤,など),泌尿器科(腎尿管結石,など),産婦人科(卵巣捻転,子宮外妊娠,など)であり,そのような例をtime lagなく該当科に振り分けられる.さらに,消化器外来受診時に重症度の判定が大まかに可能となる(下段の“考察”参照).c)往診では,唯一の“画像診断”として診療必需品である(この点に関しても“考察”参照).高齢者でほとんど情報がない状態で,現在の状態を可能な限り把握する手段として携帯超音波の重要性はこれまで報告されてきた.さらに,総合病院で加療後の施設入所例では,移動や通院が困難であり,次回の病院受診までの間の状態把握の“つなぎ”検査としての活用法もある.これらの実例を画像を中心に提示する.
課題(1):装置に関しては,充電時間の短縮と装置駆動の長時間化,充電中の装置駆動,に加え,装置の低価格化が必須である.
課題(2):超音波教育の不備に関してはこれまでも本学会でも繰り返し指摘されてきたが,若手医師に対する超音波教育のシステムが未熟なままであり,この問題は大学病院などの,拠点病院で顕著である.この点が携帯超音波の普及をおくらせ,初期対応の遅れを来している.深刻な問題である.
考察:今後,先進国全体が高齢化社会をむかえる.高齢者は,a)症状が出にくい,b)短時間で病状が悪化する,c)医師疎通がとれない,d)生化学データ上異常所見が出にくい,e)癌をはじめ各種疾患の有病率が高い,などの特徴があり,これまでと異なる視点で対処する事が逼迫課題である.この問題打開の解答として携帯超音波の活用がある.最大の問題点は若手医師にたいする超音波教育が全国的に“おそまつ“であることで,その主因である医師の認識の改革が求められる.