Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 領域横断
パネルディスカッション 領域横断1 Point-of-care USのプロトコルを考える

(S200)

Focused Assessment with Sonography for Trauma(FAST)

Focused Assessment with Sonography for Trauma (FAST)

福島 英賢, 多田 祐介, 川井 廉之

Hidetada FUKUSHIMA, Yusuke TADA, Yasuyuki KAWAI

奈良県立医科大学高度救命救急センター

Department of Emergency and Critical Care Medicine, Nara Medical University

キーワード :

【目的】
Focused Assessment with Sonography for Trauma (以下FAST)は迅速かつ正確に胸腔・腹腔内出血を診断するPoint-of-care USのプロトコルの一つである.その目的はたった一つ「胸腹部外傷において腹腔内や心嚢,胸腔内に出血の有無のみを確認する」ことであり,通常の診断を目的とした超音波検査とは大きく異なる.本発表ではこの簡便な超音波検査プロトコルの有効性について検討する.
【対象と方法】
キーワード「focused assessment with sonography for trauma」にてPubmedで検索した文献を元に感度/特異度,教育,そしてプレホスピタルにおける有効性について検討する.
【結果と考察】
腹腔内出血判定の感度は68から98%,特異度は94から100%と報告されている.しかし腹腔内出血の無い,実質臓器損傷に対する感度は63%にまで低下する.胸腹部CTによる外傷の診断がスタンダードである現状では,FASTがCT検査を減らすというエビデンスはない.しかしながら,その検査技術の習得は比較的容易であり,医学生でも修得可能とも報告されている.ポータブルエコーを用いた病院前でのFASTプロトコルの活用に関する報告も多く,外傷診療において不可欠のプロトコルとして位置づけられている.
【結語】
ショックや腹痛など,傷病者の検査前感度が高ければ当然陽性率は高くなることから,緊急開腹/開胸止血術へ迅速に移行することが可能であり,救命救急領域には不可欠の超音波検査プロトコルである.近年はポータブルエコーを用いてドクターカーやドクターヘリでFASTを行うことが一般的となりつつある.病院前から緊急手術の必要性が判断できるようになることで,さらなる救命率の改善が期待される.