Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 領域横断
シンポジウム 領域横断5 メタボリックシンドローム関連疾患のマネージメントにおける超音波検査の役割

(S198)

肥満指数(BMI)と乳がんの関連性,超音波検査の役割

Body mass index and breast cancer risk, Utilities of Breast Ultrasound Examination

中島 一毅

Kazutaka NAKASHIMA

川崎医科大学総合医療センター総合外科学

General Surgery, Kawasaki General Medical Center

キーワード :

肥満指数(BMI)と乳がんリスクとの関連については,これまでに主に欧米の研究結果から,閉経後乳がんではBMIが大きいとリスクとなることが示され,逆に閉経前乳がんでは予防的であるという弱い関連が報告されている.そして生活習慣の欧米化,生活の自動化などによりメタボリックシンドロームが進んでいることが乳癌罹患率上昇の一因と考えられている.
しかし,欧米では70歳台が罹患率のピークであるのに対し,日本人では47歳が罹患率のピークであり,他のアジア人の罹患率のピークは概ね40台であるため,アジア人ではBMIと乳がんの関連がどのようになっているのか,特に閉経前乳がんではどうなのかを調査する必要が生じた.そこで,「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」が行われ,2014年Annals of Oncologyに報告された.
本報告では,BMIによる乳がんリスクは閉経前後ともにBMIが大きくなるほど乳がんリスクが高くなり,閉経前ではBMI最大群(30以上)でのリスクは基準値(23以上25未満)の2.25倍であった.また,閉経後乳がんではBMIが1上がるごとに乳癌リスクが5%上昇する直線的な関連性がみられ,「BMIが低いほど閉経後ではリスクも低い」と言えるのに対し,閉経前では超高BMI群でなければ,基準グループと同程度のリスクであった.
しかし,乳がん予防の観点からは痩せているほうがリスクは低いとされているが,痩せすぎによる栄養不足は免疫力を弱めて易感染状態となることや,血管壁が脆弱化により脳出血を起こしやすくなることは別のリスクを上げるため,「日本人のためのがん予防法」による中高年女性のBMIの目標値は21以上25未満が推奨されている.
ではBMIと乳房超音波の関係はどうだろうか.現在,J-STARTの報告もあり,乳房超音波検査が検診や精密検査の中心を担うようになってきている.J-STARTのサブ解析では高濃度乳腺での超音波検査の有用性が際立っており,高濃度乳房の比率が高い,40歳での超音波の有用性が示されている.一方,超音波検査は深度に依存して,方位,時間,コントラスト分解能が低下することが判明しており,皮下脂肪の厚い乳房では深部病変の検出が難しい.このようなBMIの高い女性の乳房に対しては,Penetrationが高い装置を用い,適切な角度,圧迫をコントロールしながら,検査を行う必要がある.
前述の BMIによる乳癌リスクの上昇とあわせて考えると,BMIが高いと閉経前,閉経後にかかわらず,乳癌リスクが高い上,乳癌診断に有用な超音波検査の精度が低下することになる.適切な生活習慣の改善を行い,21-25程度のBMIを保つことが乳癌予防と乳癌の早期発見に重要である.