Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 領域横断
シンポジウム 領域横断5 メタボリックシンドローム関連疾患のマネージメントにおける超音波検査の役割

(S196)

非アルコール性脂肪性肝疾患における超音波検査の意義

Significance of ultrasonography for clinical practice of NAFLD

多田 俊史, 熊田 卓, 豊田 秀徳, 金森 明

Toshifumi TADA, Takashi KUMADA, Hidenori TOYODA, Akira KANAMORI

大垣市民病院消化器内科

Gastroenterology and Hepatology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

【目的】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の予後を超音波脂肪肝の程度と肝線維化進行度別に検討する.
【対象と方法】
対象は当院にて超音波で診断されたNAFLD患者4073例である.年齢は61.0(52.069.0)歳,性別(男性/女性)は2202/1871例,BMIは25.0(23.127.4)(kg/m2)であった.これらの患者の死因を検討し,さらに超音波における脂肪肝の程度と肝線維化の程度が予後にどのように影響するか,肝関連死および非肝疾患関連死にわけて競合リスク法で検討した.脂肪肝の程度は超音波によるスコア(Hamaguchi, et al. Am J Gastroeterol. 2007)を用い,線維化の程度はNAFLD fibrosis score(NFS)(Angulo P, et al. Hepatology. 2007)をそれぞれ使用した.連続変数は中央値(四分位範囲)を使用した.
【結果】
(1)超音波脂肪肝スコア(1/2/3/4/5/6)は231(5.7%)/1034(25.4%)/1033(25.4%)/1029(25.3%)/531(13.0%)/215(5.3%)例であった.NFSの結果から肝線維化進行の程度(低/中/高)は,2451(60.2%),1462(35.9%),および160例(3.9%)であった.(2)観察期間の中央値は7.1(4.89.2)年で,観察期間中に179例の死亡が認められた.死亡した179例のうち,肝疾患関連死は9例で,そのうち肝癌は5例であった.残り170例の死因(悪性疾患/脳・心疾患/脳・心疾患以外の良性疾患)は83(48.8%),42(24.7%),および45例(26.5%)であった.Cox比例ハザードモデルによる多変量解析の結果,肝線維化進行の程度(中等度および高度)は,悪性疾患でハザード比(HR)2.163(95% 信頼区間[CI], 1.3543.457)およびHR 4.814(95% CI, 2.3239.977),脳・心疾患でHR 2.265(95% CI, 1.1414.497)およびHR 8.482(95% CI, 3.55820.220),良性疾患でHR 3.216(95% CI, 1.6416.303)およびHR 5.558(95% CI, 1.92316.070)であった.逆に超音波による脂肪肝の程度は予後と関連しなかった.
【結論】
 NAFLDの死因の多くは非肝疾患関連死であった.そして非肝疾患関連死において,その予後は脂肪肝の程度よりも肝の線維化のと関連していることが判明した.今後,脂肪肝と肝硬度の両方が測定可能な超音波検査はメタボリックシンドロームも含めたNAFLDの診療においてより重要な位置を占めると考えられた.