Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 領域横断
シンポジウム 領域横断5 メタボリックシンドローム関連疾患のマネージメントにおける超音波検査の役割

(S196)

メタボリックシンドローム関連疾患のマネジメントにおける超音波検査のポジショニング

The position of ultrasonography in the management of metabolic syndrome associated diseases

角田 圭雄, 岡嶋 晃, 大橋 知彦, 中出 幸臣, 伊藤 清顕, 中尾 春壽, 多田 俊史, 豊田 秀徳, 熊田 卓, 米田 政志

Yoshio SUMIDA, Akira OKAJIMA, Tomohiko OHASHI, Yukiomi NAKADE, Kiyoaki ITOH, Haruhisa NAKAO, Satoshi TADA, Hidenori TOYODA, Takashi KUMADA, Masashi YONEDA

1愛知医科大学内科学講座肝胆膵内科学, 2康生会武田病院消化器内科, 3大垣市民病院消化器内科

1Hepatology and Pancreatology, Aichi Medical University, 2Gastroenterology, Kosekai Takeda Hospital, 3Gastroenterology, Ogaki Municipal Hospital

キーワード :

2016年のWHOの報告によると,1975年と比較して世界における肥満人口は約3倍に増加し,BMI 25kg/m2以上は19億人,30kg/m2以上が6.5億人に達する.一方,糖尿病患者も成人人口の4.7%(1980年)から8.5%(2014年)に増加している.近年,肥満や糖尿病などのメタボリックシンドローム(MetS)関連疾患と発癌リスクとの関連が注目され,国内では肥満が乳癌(閉経後)のリスクを増加させるのは「確実」,大腸癌と肝臓癌に関しては「ほぼ確実」,子宮体癌に関しては「可能性あり」と報告されている.アジア人でも糖尿病患者は26%癌死亡率が高く,国内からも糖尿病患者では肝癌,膵癌,大腸癌の発癌リスクが高いことも明らかになった.このようにMetS関連疾患患者における癌のスクリーニングにおいて超音波検査の果たす役割は大きい.さらに,国内の糖尿病患者約45,000例(2001から2010年まで)の死因の解析において,心疾患,肺炎に次いで肝疾患関連死が第3位(9.3%)であった(1).慢性肝疾患の経過観察に超音波検査の果たしてきた役割は極めて大きいが,特にMetSの肝臓の表現型であるNAFLDでは超音波検査の果たす役割はさらに広がっている.従来からの肝脂肪化や肝癌のスクリニーングはもちろん,造影超音波によるNASHの診断(2),FibroScanなどのelastographyによる肝硬度(LSM)測定 (3),Controlled Attenuation Parameter(CAP)や減衰率での脂肪肝の高感度の検出などが挙げられる.FibroScanは肥満者での施行に難があるが,XL probeの活用によって克服できる.またLSM 10kpa以上はstag3/4の肝線維化を疑う所見であるが,偽陽性が高いことが課題であるが,血小板(PLT)で補正する LSM/PLT ratio(LPR)indexとすると疑陽性は低下する(4).最近,NAFLDでは肝癌のみならず,結腸直腸癌(男性)(ハザード比[HR]: 2.01),乳癌(女性)(HR: 1.92)のリスクが高いとの報告もある(5).さらにNAFLDを含むMetSでは心血管イベント,動脈硬化性疾患の発症率が高く,動脈硬化の評価としての超音波検査も有用性も確立されている.また近年,心臓周囲脂肪における慢性炎症が冠動脈硬化に寄与すると報告されている(6).治療では新規の糖尿病薬であるSGLT2阻害薬は心臓,腎保護作用が立証されているが(EMPA REG outcome, CANVAS program),NASH(7)や心臓周囲脂肪,さらに発癌抑制効果も期待されている.以上のようにMetS関連疾患において,発癌(肝癌,乳癌)のサーベイランス,肝脂肪化および肝硬度の評価,動脈硬化性疾患の評価,心臓周囲脂肪や左室拡張障害を含めた心機能などMetS関連疾患のマネジメントにおいて侵襲がなく,簡便性の高い超音波検査の果たす役割は大きく,更なる技術のイノベーションを期待したい.
参考文献:
(1)Nakamura J, et al. J Diabetes Investig. 2017;8:397-410.
(2)Iijima H et al. Hepatol Res. 2007;37:722-30.
(3)Yoneda M et al. Dig Liver Dis 2008;40:371-8.
(4)Okajima A, Sumida Y, et al. Hepatol Res 2017;47:721-730.
(5)Kim GA et al. J Hepatol in press
(6)Hirata et al. Int Heart J. 2011;52:139-42.
(7)Sumida Y, et al. J Gastroenterol, in press