Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 領域横断
シンポジウム 領域横断4 プライマリ・ケアにおける超音波検査実践活用術~腎・泌尿器、女性生殖器編~

(S193)

子宮疾患の超音波診断

Ultrasound diagnosis and management of the Uterus

桑田 知之

Tomoyuki KUWATA

自治医科大学附属さいたま医療センター産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Jichi Medical University Saitama Medical Center

キーワード :

 プライマリ・ケアの現場から,「超音波検査で,婦人科臓器(子宮)に腫瘤が見られた」との紹介状が来る.多くの場合診断通りなのだが,異常がないこともしばしば経験する.健診時に観察した腫瘤が消えたのか,それとも違うものを腫瘤と見誤ったのか.このことについて少し解説してみたい.また,女性の下腹部痛の鑑別は,プライマリ・ケアの現場では比較的多く遭遇する場面であるが,婦人科医でないと二の足を踏む場面でもある.経腟超音波を使わず,経腹超音波と数この問診,検査だけでいくつかの疾患は鑑別可能である.これらについて,実際の症例に沿って解説していきたい.
① 子宮腫瘤の超音波像
 子宮腫瘤で多いものは子宮筋腫,子宮腺筋症(内膜症)である.筋腫は石灰化から液状変性まで,様々なエコーパターンを示すが,境界が鮮明で正常筋層との区別がつきやすい.一方,腺筋症は子宮筋自体がびまん性に肥大するため,境界鮮明な腫瘤像は得られない.子宮体がんは子宮体部に腫瘤が存在するように思えるが,別名子宮内膜がんと呼ばれ,超音波では異常な内膜肥厚像として観察される.
 正常と見誤りやすい子宮腫瘤像としては,やや丸みを帯びた正常子宮体部を,断面の取り方で「子宮筋腫」のような腫瘤像としてしまうケースが多い.また,子宮頸部筋層内に多数の小嚢胞が見られることがあるが,これはナボット嚢胞という正常構造物である.
② 下腹部痛で子宮疾患を疑ったとき
プライマリ・ケアの現場で遭遇する下腹部痛のうち,真に子宮疾患が原因であることはあまり多くない.下腹部正中の痛みであれば,子宮疾患を疑うことが多いが,多くの場合,痛みの場所を指差すと,上すぎて婦人科臓器はそこにはない,といったケースがある.この場合,原因の多くは腸管の過度な拡張であることが多い.クラミジアや細菌の感染による子宮疼痛では,帯下の量が多いことと子宮の圧痛があることに留意すべきである.肝周囲の炎症が併発するFitz-Hugh-Curtis症候群は,比較的稀であるので,肝周囲の炎症所見がなければ,クラミジアを否定できるわけではないことを認識しておくことは重要である.
③ 妊娠関連の子宮疾患
 子宮疾患の話をするにあたり,妊娠は確認しておくべき必須事項である.患者自身は「避妊してるから」,「こないだ月経来たから」,絶対妊娠していないと断言するが,診察してみたら妊婦だったということはこれまでも多く経験しているため,我々婦人科医はこの点は患者を信じていない.
 胎児がみえていない時期の下腹部痛で,最も注意すべき疾患は子宮外妊娠である.特に下腹部痛+性器出血+子宮内に妊娠兆候ない場合は,子宮外妊娠否定の為に,再度妊娠反応を行う必要がある.
 産褥の多量性器出血は,分娩から遅くなればなるほど,出血性ショック等になりやすくなる恐れがある.特に産褥25日目から40日目に初めて出た多量出血は,子宮内の産褥仮性動脈瘤であることが多く,カラードプラ法などを用いて積極的な診断を行うべきである.