Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 領域横断
シンポジウム 領域横断4 プライマリ・ケアにおける超音波検査実践活用術~腎・泌尿器、女性生殖器編~

(S192)

前立腺・精巣の超音波検査

Ultrasound examination for prostate and testes

沖原 宏冶

Kouji OKIHARA

京都府立医科大学北部医療センター泌尿器科

Urology, North Medical Center Kyoto Prefectural University of Medicine

キーワード :

男性の下腹部超音波検査のレポートにおいて,どこまで記載すればよいかを迷うのが前立腺に関する記載である.まず,膀胱内腔のサーベイを行い,腫瘍性病変や結石の同定を行ったのち,前立腺を同定する.尿が100-150cc程度蓄尿していると,膀胱頸部に前立腺が描出される.前立腺の疾患は,前立腺癌,前立腺肥大症,前立腺炎,のう胞性病変が代表的なものである.上記のなかで,記載が特に必要な疾患は前立腺癌,前立腺肥大症の診断となる.しかしながら,経腹走査自体の限界があることを理解したうえで,レポートの作成を行う必要がある.基礎知識として,下記の事項の理解が必要である.
1)患者の準備として,上述のように尿を100-150cc程度蓄尿してもらう.蓄尿が不十分な場合は水分の摂取をしてもらう.膀胱にたまっている尿を音響窓にしないと,明瞭な前立腺の輪郭の描出が困難となる.また,尿がたまりすぎても,膀胱壁が恥骨部に張り出して,探触子を扇状に振っても前立腺全体が描出できない場合がある.
2)原則として横断走査からサーベイを開始する.探触子を扇状に振る.前立腺容積を算定する際は最大断面を描出し,縦径(H),横径(W)を計測する.次に縦断面を観察する.前立腺の尖部(尿道側)付近は恥骨により描出困難である場合が多い.精嚢や膀胱・前立腺境界を同定し,前立腺の膀胱内突出の有無を判定する.前立腺容積計測の際は最大の上下径(L)を計測する.楕円体法による前立腺容積はH×W×L×0.5で算定される.正常の前立腺容積は20-30ccである.
3)早期前立腺癌は腹部超音波検査での診断は困難である.進行前立腺癌の場合は,左右非対称,内部エコーレベルが不均一である可能性がある.超音波診断だけでは,前立腺癌の確定診断は無理であり,診断レポートには上記の対称性とエコーレベルの客観的記載にとどめるべきである.
4)正常な前立腺の場合,断面形状は,三角形または半月型であるが,前立腺肥大を伴えば,横断・縦断走査でも前立腺断面は円形となる.前立腺肥大は良性疾患であるため,左右対称である場合が多いが,一部の症例では,片葉のみが肥大する症例もある.腺腫の増大に伴い,被膜エコー像の明瞭な描出や尖部(尿道側)付近の描出が困難となり,膀胱頸部の挙上が認められる.また,腺腫の肥大が著明な場合,膀胱腫瘍との鑑別が困難なこともある.前立腺肥大症は排尿障害を来たす疾患であるため,診断レポートは形態観察のみにとどめ,前立腺の断面形状,左右対称性,腺腫の肥大の有無,片葉肥大の有無,膀胱頸部の挙上などを記載する.
精巣超音波検査は緊急診断を要するか否かが極めて重要である.緊急手術の適応をまず検討しなければならないのが,思春期男性の「陰嚢(こうがん)が急に痛くなった」である.この訴えは1)精巣捻転,2)精巣垂捻転,3)精巣捻転解除(De-torsion),4)精巣上体炎をまず念頭におく.高周波数の探触子を用いた,Bモード,ドプラ検査が手術適応の可否に不可欠である.精巣内部のhomogenousか,精巣上体の血流の左右差はどうかが主な判定基準となる.精巣腫瘍の初期診断もエコーは威力を発揮する.本シンポジウムでは症例を呈示しながら,腫瘍のエコー上の特徴を整理したい.