Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 領域横断
シンポジウム 領域横断3 新しい超音波イメージングの有用性と期待

(S189)

超音波CT(Computed Tomography)を用いた頭蓋内計測の基礎的検討

Ultrasound CT (Computed Tomography) for transcranial imaging

東 隆, 林 佑樹, 辻本 雄太郎, 中村 弘文, 高木 周

Takashi AZUMA, Yuki HAYASHI, Yutaro TSUJIMOTO, Hirofumi NAKAMURA, Shu TAKAGI

1東京大学医学部,疾患生命工学センター, 2東京大学工学部

1Faculty of Medicine, The University of Tokyo, 2School of Enibeering, The University of Tokyo

キーワード :

【目的】
超音波CT(Computed Tomography)においては乳がんを対象とした装置開発が先行しているが,我々は超音波CTの可搬性に着目し,救急搬送中の脳卒中診断を目的として,頭蓋内超音波CTを構想している.本研究では,頭蓋内の断層像再構成における頭蓋骨のエコーデータへの影響の評価と,これに伴うアーチファクト除去方法の検討を行った.
【方法】
予備的検討にて1/2にスケールダウンした直径100 mmのリングアレイ中に,頭蓋骨と点散乱体を設定し,2次元波動伝搬を数値計算により求めた.アレイは中心周波数1.6 MHz,1024の送受信素子から構成される.頭蓋骨モデルは,図(a),(d)に示す周期的に厚みが変化する形状や,海綿骨を含む板間層を模擬したモデルを作成した.これらのモデルにおいて散乱強度分布の再構成を行った.更に更に直径200mmで素子数2048のリンクアレイと摘出頭蓋骨を用いて,点散乱体として設置したワイヤに対する再構成アルゴリズムを適用した.
【結果】
数値計算による予備的検討において,散乱体特異的な信号を抽出する統計的処理を開口合成法に組合せる手法により,頭蓋内に現れる骨特異的なアーチファクトが抑制できることが確認された(図(b)から(c)).また,海綿骨が存在し,骨の透過率が大きく低下するケースにおいても,(e)のようなエコーデータが取得され,(f)のように画像化できることが確認できた.(e)の横軸は受信チャンネル番号,縦軸は送波してからの経過時間,放物線上に見える波形は透過波,図の下部に描出されているsin波に似た形状の波形が散乱体からの信号である.いずれも半値幅は0.9 mmであった.
実験では,シミュレーションに比べてS/N比は落ちるものの,ワイヤからの信号が検出可能であることを確認した.
【結論】
軟部組織を対象とした撮像よりも低周波を用いることで,頭蓋骨を模擬した系においても信号取得が可能であり,リングアレイを用いることでミリオーダーの解像度が実現可能であることを示した.