Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 領域横断
シンポジウム 領域横断2 超音波によるtheranostics(診断と治療)の広がり

(S184)

リピッドバブル製剤の開発と超音波セラノスティクス

Development of lipid bubble and its application to ultrasound theranostics

丸山 一雄, 鈴木 亮, 小俣 大樹, UNGA Johan, 大崎 智弘

Kazuo MARUYAMA, Ryo SUZUKI, Daiki OMATA, Johan UNGA, Tomohiro OSAKI

1帝京大学薬学部, 2鳥取大学農学部

1Faculty of Pharma-Sciences, Teikyo University, 2Faculty of Agriculture, Tottori University

キーワード :

超音波とバブル製剤を組み合わせて,診断と治療を行うセラノスティクスが注目されつつある.2015年11月に,世界で初めて,カナダの脳外科グループが,脳腫瘍患者に対して,抗癌剤とバブル製剤を投与して低強度に出力調整された経頭蓋集束超音波装置で,バブルのソノポレーションによりBBBを開口させ,抗がん剤を送達させる治療を報告した(1).また,ノルウェーの肝胆膵がん担当医師グループは,膵臓がん患者に対して,SonoVueとゲムシタビンによる治療を試みている(2).メカニズムは,超音波造影剤のソノポレーションを誘導し周辺の血管壁を開口させ,薬物を送達させる方法である.本邦においては,残念ながらセラノスティクスに関する研究は進んでいない.世界的にも,セラノスティクスに特化したバブル製剤は無い.我々は,リン脂質とパーフルオロプロパンガスから新しいセラノスティクス用リピッドバブル(LB)を開発し,凍結乾燥製剤化に成功した(PCT出願済).用時に注射用水を加え,軽く振盪復水して用いることができる.担がん動物で超音波セラノスティクスに関する性能を調べたところ,以下の結果を得た.新しいLBは,腫瘍新生血管を鮮明に描出し,長時間の造影を可能にした.ドキソルビシン(DOX)とLBを一緒に投与し,腫瘍部位に治療用超音波(2 MHz)を照射すると,DOXの腫瘍内濃度を1.6倍に高めることができ,抗腫瘍効果もDOX単独の1/5で十分であった.DOXの投与量を低減でき副作用を回避できる可能性が示された.血管周皮腫罹患犬(パピヨン,2.5kg)に対して,LBおよびDOXIL(DOXのリポソーム製剤)を投与し,腫瘍組織に超音波を照射(1 MHz)した.2回の治療で,腫瘍内の血流は減少し,腫瘍体積は減少した.耳垢腺がん罹患犬(トイプードル,3.8kg)にDOXILを点滴静注し,LBを投与後がん組織に向けて超音波を照射する治療を複数回行った.その結果,顕著な腫瘍縮小効果が認められた(図1).このように新規LBと超音波の組合せは,バブルからのエコー信号による造影診断とバブルのソノポレーションによる薬物送達による治療を可能にする実用的なセラノスティクスツールと言える.
(1)ClinicalTrials.gov Identifier: NCT02343991.(2)Dimcevski G., et al. J Control Release 243, 172(2016).