Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2018 - Vol.45

Vol.45 No.Supplement

特別プログラム・知を究める 領域横断
シンポジウム 領域横断1 超音波で全身を見る

(S182)

超音波で全身を見る:血管領域

Vascular ultrasonography

濱口 浩敏

Hirotoshi HAMAGUCHI

北播磨総合医療センター神経内科

Department of Neurology, Kita-harima medical center

キーワード :

【はじめに】
血管エコーは全身の血管を無侵襲に評価できる非常に有用な検査法である.かつては血管造影がgold standardであったが,現在ではより低侵襲,無侵襲な検査法であるCT,MRI,MRAに加えて,エコー検査が重要な役割を担っている.その際,一領域の血管エコーだけを知っていればよいという訳ではなく,様々な血管エコーの臨床的役割を理解しておくことは重要である.今回,血管エコーの役割と可能性について報告する.
1.脳梗塞診療における血管エコーの役割:頭蓋内外動脈の狭窄や要注意プラークは脳梗塞の主原因の一つである.これらの観察に頸動脈エコーや経頭蓋エコーを用いることで,危険性の評価と適切な治療方針を検討することができる.特に要注意プラークを観察した場合は,その性状評価を精密に行うことで,発症リスクの判断ができ,また,保存的治療を行うこととしても,定期的に観察することで性状変化を確認することができる.狭窄例については,他の検査に比べて,血流の状態をリアルタイムで評価できることは重要な意味を持つ.また,心原性塞栓を評価する際,通常は経胸壁心エコー,経食道心エコーを用いて心内血栓の確認,右左シャントの確認などを行うが,この際,右左シャントを確認した場合は,奇異性塞栓の可能性が考えられるため,塞栓源として下肢静脈エコーで深部静脈血栓(DVT)を観察する必要がある.また,麻痺のある脳梗塞急性期患者では高率にDVTを引き起こす可能性がある.適切なDVT予防と評価が重要である.
2.胸痛に対する血管エコーの役割:胸痛を訴えた場合,急性冠症候群の精査としては経胸壁心エコーを行うが,血圧の左右差を認めた場合は大動脈解離も念頭に置く必要がある.血管エコーでは上行大動脈から弓部,下行大動脈,腹部大動脈に至るまで動脈解離の波及を確認できる.また,真腔・偽腔の評価についてはflapの動きや血流情報を加えることで評価できる.また,動脈瘤の評価もエコーで可能であり,特に動脈瘤の形状,最大短径の評価,血栓の有無などを確認することで手術適応判断に用いられる.さらにはステントグラフト留置後のエンドリークについても評価可能である.
3.末梢血管の評価に血管エコーを用いる:下肢血管評価にもエコーが効力を発揮する.急性動脈閉塞,慢性閉塞の評価に用いられるだけでなく,最近の高周波プローブを駆使することで,バージャー病やレイノー病など,より末梢の低流速血流も評価が可能になった.また,血管エコーの特徴として,血流評価を詳細に行うことで,側副血行路の走行評価にも使用できる.また,下肢静脈エコーでは,DVTの評価だけでなく,静脈瘤の評価,レーザー焼灼術などにもエコーが利用されている.また,二次性高血圧の評価として,腎動脈エコーによる狭窄の評価も重要である.
4.血管炎の評価に血管エコーを用いる:大型血管炎の評価には全身血管エコーが有用である.高安動脈炎では鎖骨下動脈,頸動脈,大動脈,腎動脈などの評価が重要であり,さらに,巨細胞性動脈炎では浅側頭動脈の評価が診断に結びつく.いずれもどこまで血管炎を疑うかだが,疑った場合は血管炎の範囲を確認することが重要である.
【おわりに】
様々な血管エコーを駆使することで脈管診療は成り立っているといえる.今回,実際の症例を提示しながら血管エコーの有用性について報告したい.