英文誌(2004-)
会長講演
会長講演
(S175)
画像診断の未来
Future Perspective of Diagnostic Imaging
中谷 敏
Satoshi Nakatani
大阪大学大学院医学系研究科
Osaka University Graduate School of Medicine
キーワード :
超音波検査にとどまらず画像診断法の進歩は著しい.循環器領域を例にとれば,心エコー,CT,MRI,核医学の四つの非侵襲的画像診断法が日常臨床で用いられている.さまざまな疾患の診断や病態評価,治療法の選択,予後推定を正しくかつ効率的に行うためには一つの検査だけではしばしば不十分である.急性心筋梗塞を例にとろう.心電図と心エコーで梗塞の診断はつく.冠動脈造影下に冠動脈インターベンションを行った後,MRIで遅延造影を見ることにより線維化の程度を知ることができ予後推定に役立つ.慢性期には冠動脈CTでインターベンション後のフォローを行うことができるし,核医学で残存虚血を知ることができる.もちろん心エコーで経時的に観察することにより様々な合併症や心臓のリモデリングを評価することはできる.しかし冠動脈の詳細な形態評価は心エコーではできないし,梗塞の深達度評価もMRIの方が優れている.したがって今やこの四つの検査法を使いこなすことが循環器医に求められているのではないだろうか.しかしすべての手法において専門家たりえる循環器医はそんなに多くないだろう.そうなると各手法の専門家をつなぐ仕組みが必要となる.ひとつは画像診断センターをセットアップし,複数の検査法による集学的画像診断が必要となる症例をそこでコンサルトする仕組みが考えられる.しかしよほどの大病院でないかぎりセンター化は難しいし,また各手法ごとの専門家を擁することも難しい.より現実的なもう一つの方法はある手法の専門家でありながら,同時に他の手法にもある程度は通じている,すなわち適応と弱点を知っている,基本的なリーディングができる,という人材を育成することである.このような人材がいれば,その人物にコンサルトすることにより効率的な画像診断を行うことが可能である.ではどのような人物がそのような人材たりうるのだろうか.少なくとも循環器の分野では心エコーの専門家がその任にふさわしいと考えている.なぜなら心エコー専門家は,断面を自分で選びながら動いている心臓を評価するということを常に行っており解剖の理解や形態評価,機能評価に長けているのみならず,経時的検査に携わることで治療の効果や予後の予測にも通じているからである.今後はこのような人材を育成するような教育プログラム,人材を認定するような仕組みづくりを考えていく必要があるであろう.