Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 健診・その他
健診・その他

(S694)

超音波で腹部大動脈から分岐する栄養血管が同定できた肺分画症の1例

A case of the pulmonary sequestration detected the feeding artery from abdominal aorta by ultrasonography

杉井 公美, 平井 都始子, 丸上 永晃, 山下 奈美子, 吉田 秀子, 松永 剛, 田畠 歩, 丸上 亜希, 武輪 恵, 伊藤 高広

Kumi SUGII, Toshiko HIRAI, Nagaaki MARUGAMI, Namiko YAMASHITA, Hideko YOSHIDA, Takeshi MATSUNAGA, Ayumi TABATA, Aki MARUGAMI, Megumi TAKEWA, Takahiro ITOU

1奈良県立医科大学中央臨床検査部, 2奈良県立医科大学総合画像診断センター, 3奈良県立医科大学放射線科

1Department of Central Clinical Laboratory, Nara Medical University, 2General Diagnosis Imaging Center, Nara Medical University, 3Department of Radiology, Nara Medical University

キーワード :

【はじめに】
肺分画症は正常な気管・気管支と交通のない気管支肺胞構造をもった異常な肺組織が,肺葉内または肺葉外に存在し,大循環系からの異常動脈により血液供給をうける疾患である.通常は造影CTや造影MRで血流支配を確認するが,今回我々は超音波検査で診断し得た肺分画症の一例を経験したので報告する.
【症例】
1歳女児.既往歴漏斗胸.発熱,咳嗽および鼻汁のため,近医を受診.近医で対症療法が開始され,経過観察となった.症状の改善がないため,数日後再度近医を受診したところ,SpO2が96%で多呼吸があり,左呼吸音の減弱を認めた.胸部X線にて左心陰影に重なる部分に二ボー形成を認め,胸部単純CTでは左肺に液面形成を認める空洞病変と胸水貯留を認めた.以上のことから,肺炎および肺膿瘍が疑われ,外科的処置の必要性も考えられたため,当院紹介,入院の運びとなった.当院受診時,WBC20700/μL,CRP12.6mg/dLであり,炎症反応の上昇を認めた.尿中肺炎球菌抗原は陽性で血液培養では細菌は検出されなかった.主治医が病棟で行った超音波検査で左肺下葉の腫瘤様病変部に血流表示を認め,単純な膿瘍は否定的であったことから超音波検査が依頼された.超音波装置はGEヘルスケアLOGIQ E9,プローブはコンベックス型高周波プローブのC2-9とリニア型プローブの9Lを使用した.施行した超音波検査では左肺下葉に約7cm大の充実性の腫瘤様病変を認めた.また,内部には大小様々な嚢胞の集簇像を認めた.病変部には腹部大動脈から分岐する拍動性の流入血管を認め,肺分画症の診断が可能であった.また,左胸水が貯留し,上葉は含気を失って虚脱して無気肺を呈していると考えられた.その後の外科的摘出の術前評価のため施行した胸部造影CTでも左肺下葉の病変部には腹部大動脈から異常血管が直接分岐して血液供給されていることが確認された.また,左肺静脈への潅流がみられ,肺葉内肺分画症と診断された.
【考察】
肺分画症は正常な肺組織から分画された先天性の発生異常で,分画肺が正常肺と共通の胸膜を有する肺葉内と有しない肺葉外に分類される.供給される動脈は大動脈からの分岐した異常血管であるが,潅流する静脈は異なり,肺葉内肺分画症では肺静脈,肺葉外肺分画症では奇静脈や下大静脈,門脈に流入する.供給・潅流する血管を同定することが診断にとって重要となる.我々が検索し得た報告では胎児での肺分画症の診断は超音波検査で可能であった報告はあるが,乳幼児での診断は超音波検査ではまれであり,造影CTや造影MRでの報告が大多数であった.肺分画症の診断は通常,造影CTや造影MRであるが,超音波検査で大動脈から分岐し,肺病変部へ流入する異常血管を描出することにより肺分画症を診断することも可能であると考える.