Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 血管
血管

(S691)

入院中に発症した下肢血栓閉塞に対して,エコー診断が有用だった一例

Usefulness of peripheral ultrasound for sub-acute occlusion of femoral artery: case report

泉 学, 川井 夫規子, 植林 久美子

Manabu IZUMI, Fukiko KAWAI, Kumiko UEBAYASHI

1済生会宇都宮病院総合内科, 2済生会宇都宮病院超音波診断科

1General internal medicine, Saiseikai General Hospital, 2Ultrasounds, Saiseikai General Hospital

キーワード :

急性下肢閉塞に対しては,血行再建が急務であるが,症例の意識状態が悪い場合や亜急性に症状が進行する場合には,その発見や診断に苦慮することも多い.今回我々は,発見,診断に苦慮したものの,その後の迅速な対応により,患肢を救い得た症例を経験したため報告する.症例は,78歳女性.基礎疾患に心房細動を認め,抗凝固療法を行っていたが,合計2回の輸血を要する貧血の進行を認め,抗凝固療法を中断されていた方である.7月某日,歯痛を認め歯科医院を受診するも口腔外科でなければ対応困難とされ,近くの総合病院を受診.蝕及び顔面帯状疱疹と診断され,軟膏を処方されたものの,徐々に体調の悪化を認め,介助歩行にてトイレに行くような状態となり,二日後に同院を再診.バラシクロビルの処方を受けたものの内服が出来たかどうかは不明であった.さらに二日を経過し,意識障害を呈し同院へ救急搬送.意識状態と経過から,ヘルペス脳炎疑いにて当院へ救急搬送となった.当院にて髄液穿刺を行ったが,軽度の単核球の上昇を認めるのみで,画像からもヘルペス脳炎は否定的であった.意識障害の原因は,蝕及び顔面帯状疱疹にて経口摂取不良により,高度の脱水を認めたことが原因と考えられた.経口摂取は不可能と判断し,ゾビラックスの静脈内投与を行い,混合感染を考え,CTRXの投与を行った.入院翌日には意識状態の改善を認めたものの,主に口腔内の痛みが強く,経口摂取は難しい状態であった.第3病日には意識のさらなる改善を認め,エンシュアから栄養摂取が可能となった.徐々に経口摂取も安定したが,入院による認知機能の低下と思われる無気力があり,リハビリテーションを行ってもADLのアップは困難であった.某日夕方になり,左膝の痛みを自覚.色調の変化などは認められず,膝に限局的なものであったため,経過観察とした.翌日の採血で,CKの軽度上昇を認め,痛みのあった左側の膝下の色調がややpaleとなった.痛みは軽減しており,下肢動脈エコー検査で,左浅・深大腿動脈以下血栓閉塞を認めたものの,輝度の上昇を認めやや時間の経過したものと判断した.ヘパリンによる治療を開始し,その後のCPKは減少し,色調は少し改善したが,痛みが持続していたAKI(acute kidney injury)も補液にて改善しており,CT-Angioを行ったところ,エコーとほぼ同じ所見が得られた.循環器内科へコンサルトしたところ,血行再建術の適応と判断され,同日にPTAを施行.同側から順行性にアプローチ.IVUSを施行したところ,多量の血栓を認めた.Distal protection +フィルトラップを留置,.フォガティーにて血栓を吸引.Destinationでも繰り返し吸引を施行し,造影確認.POBAからSMART stentを留置.後拡張を行ったところで,膝窩への血栓を認めたため,同部位でThrombusterにて繰り返し吸引を施行.その後は良好なflowを確認し,手技を終了した.ワイヤーが比較的スムーズに進んだこと,吸引された血栓からも,急性期の血栓と判断された.経過からは,脱水,炎症反応により心房細動による心房内血栓が原因と考えられたため,抗凝固療法を行った.患肢は,壊死所見なく救済しえたが,元々のADLの低下はその後のリハビリテーションでも改善できず,最終的に慢性期病院へ転院となった.症状の進展がsub-acuteであり,治療方針に苦慮したが,適切なPTAの施行により患肢を救済しえた症例を経験したため報告する.