Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 血管
血管

(S690)

下肢静脈エコーが診断に有用であった後腹膜腫瘍の一例

A case of retroperitoneal tumor diagnosed by leg vein ultrasound

藤原 美子, 加藤 由美, 山本 祐三, 菊田 健太, 酒本 佳洋, 仲川 善之, 朴木 寛弥, 田中 康仁

Yoshiko FUJIWARA, Yumi KATO, Youzou YAMAMOTO, Kenta KIKUTA, Yoshihiro SAKAMOTO, Yoshiyuki NAKAGAWA, Hiroya HOUNOKI, Yasuhito TANAKA

1宇陀市立病院臨床検査科, 2宇陀市立病院整形外科, 3奈良県立大学病院整形外科

1Department of Clinical Laboratory, Uda City Hospital, 2Department of Orthopaedics, Uda City Hospital, 3Department of Orthopaedic, Nara Medical University Hospital

キーワード :

【はじめに】
後腹膜腫瘍とは,後腹膜領域(腹部後方)に発生した腫瘍の総称で,比較的稀な疾患である.初期には症状が現れないことが多く,早期発見が困難である.腫瘍が増大すると,周辺臓器を圧排し症状が出現する.今回,深部静脈血栓症による下肢腫脹を主訴とし,下肢静脈エコーが診断に有用であった後腹膜腫瘍の一例を経験したので報告する.
【症例】
30歳 女性,特記すべき既往歴・家族歴なし.
2週間前より右下腿腫脹と発赤が出現し,当院整形外科を初診.
大腿周囲長(右:45cm,左39.5cm)・下腿周囲長(右:40.5cm,左33cm).
下肢血管エコーにて右総大腿静脈から後脛骨静脈まで低輝度の血栓を認めた.
さらに近位での血栓を検索したところ,骨盤領域に右外腸骨動脈・静脈に巻きつくように腫瘤を認めた.この腫瘍より末梢に血栓を認め,後腹膜腫瘍による還流障害を疑った.造影CTでは,右腸骨静脈の閉塞と右腸腰筋前方に64mm大の不整腫瘍を認めた.MRIでも同様の所見であった.
他院へ紹介となった.
【考察】
下肢深部静脈血栓症の検索手順は,総大腿静脈で血栓を認めた場合中枢端の確定をするため,腸骨・下大静脈まで観察する必要がある.本症例は,検査時には,右下肢全体の腫脹を認め,右総大腿静脈に血栓を認めたため,中枢端の検索に腸骨領域を観察し,右総腸骨動脈・静脈周囲に約6cmの低輝度腫瘍を認めた.また腫瘍より遠位の静脈では血栓を認め,腫瘤上部より中枢では血栓は認められなかった.
以上より,深部静脈血栓の原因として静脈圧排による,血栓が考えられた.
下肢深部静脈血栓の原因として,Virchowの3成因が挙げられる.本症例は,腫瘍による圧排での血流鬱滞及び悪性腫瘍による血液凝固能の亢進により深部静脈血栓を発症したものと考えられた.また,がん患者における血栓塞栓症の発症頻度は約11%と報告されており,悪性腫瘍と診断された患者では死因の第2位にあげられる.
今回,大腿静脈に血栓を認め,更に骨盤領域を検索することで,後腹膜腫瘍を発見できた症例であった.