Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 血管
血管

(S690)

妊娠中の深部静脈血栓症発症を契機に発見された重複下大静脈の一例

Deep Vein Thrombosis in a Pregnant Woman with Double Inferior Vena Cava

佐藤 和奏, 渡邊 博之, 梅田 有理, 新保 麻衣, 渡部 久美子, 飯野 貴子, 伊藤 宏

Wakana SATO, Hiroyuki WATANABE, Yuri UMETA, Mai SHIMBO, Kumiko WATANABE, Takako IINO, Hiroshi ITO

秋田大学大学院医学系研究科循環器内科学

Cardiovascular Medicine, Akita University Graduate School of Medicine

キーワード :

30代,女性.妊娠9週に左下肢腫脹と疼痛が出現し,近医を受診.超音波検査にて左浅大腿静脈に血栓を認めたため,深部静脈血栓症と診断され,ヘパリン治療が開始された.しかし,APTTの延長が得られたにも関わらず,第6病日には両下肢にまで血栓が広がっていた.造影CTを施行したところ,下大静脈内には腎静脈合流部の4cm遠位まで血栓が充満しており,周囲に側副血行路の発達も認めた.肺動脈塞栓の所見は認めなかった.当院転院後,下大静脈フィルター留置,子宮内容除去術施行し,ウロキナーゼによる血栓溶解療法を行ったところ,血栓はほぼ消退した.血栓形成の原因に関して,血液検査上では血栓性素因を認めず,HIT抗体も陰性であった.ただし,下大静脈フィルターを留置した際,フィルターの拡張が不十分であったことから下大静脈奇形が疑われた.血栓消退後に造影CTを再検したところ,下大静脈が2本存在していることが明らかとなった.1つ目は両側大腿静脈と連続している下大静脈で,それは腎静脈レベルで盲端となっていた.2つ目は骨盤内静脈から続いている下大静脈で,それには腎静脈が合流し最終的に右房に流入していた.これらの所見から下大静脈が2本並走するタイプの重複下大静脈と診断した.前者に静脈血栓が形成され,後者に下大静脈フィルターが留置されたものと考えられた.さらにこれら下大静脈間の交通の存在を証明するため,コントラストエコーを施行した.右大腿静脈から生食マイクロバブルを注入したところ,この2本の下大静脈間にわずかに交通を認めた.
本症例は,大腿静脈から連続する下大静脈の上端が盲端となっていることから,もともと静脈還流障害が存在しており,そこに妊娠による易血栓傾向が加わり深部静脈血栓症を発症したものと考えられた.若年性深部静脈血栓症は非常に稀でその多くは血栓性素因を有するものであるが,それ以外では16%の頻度で下大静脈奇形の合併が報告されている.下大静脈奇形の形態は多様であり,本症例について文献的考察を含め報告する.