Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
胎盤・臍帯・母体卵巣

(S678)

子宮下節筋層内に広範囲なhoneycomb構造を持つ静脈瘤を認めた低置胎盤の1例

Low-lying placenta with varices creating extensive honeycomb appearance in the uterine lower segment

塩﨑 有宏, 吉江 正紀, 川口 美保子, 大北 恭子, 伊東 雅美, 福田 香織, 米田 徳子, 米田 哲, 齋藤 滋

Arihiro SHIOZAKI, Masanori YOSHIE, Mihoko KAWAGUCHI, Kyoko OOKITA, Masami ITO, Kaori FUKUTA, Noriko YONEDA, Satoshi YONEDA, Shigeru SAITO

富山大学産科婦人科

Obstetrics & Gynecology, University of Toyama

キーワード :

【はじめに】
妊娠経過中において子宮下節筋層内に広範囲にわたる静脈瘤を認めることはきわめてまれである.また怒張した静脈瘤が内子宮口近くの筋層内に存在する場合には,胎盤剥離時に出血量が多くなることが予想され,慎重な管理が求められる.今回子宮下節筋層内に広範囲なhoneycomb構造を持つ静脈瘤を認めた低置胎盤症例を経験したので報告する.
【症例】
35歳,初産婦.前医にてAIH妊娠し,胎児発育は順調であった.超音波断層法で内子宮口付近に豊富な血流と胎盤を認めたことから全前置胎盤疑いと診断され,妊娠29週2日に当科紹介され入院となった.超音波断層法では子宮左側の後下壁から内子宮口周囲までの筋層は約3cmと著明に肥厚しており,筋層内には緩やかな血流を伴う直径5-6mmの静脈血管を多数認めた.また胎盤はその肥厚した部位に付着していたものの,胎盤下縁は内子宮口にかかっていないことから,全前置胎盤ではなく低置胎盤付着部位に存在する子宮下節筋層内の広範囲な静脈瘤と診断した.妊娠30週3日に施行したMRIでも同様の所見が認められたことから,不測の大量出血に備えて自己血貯血を開始した.その後静脈瘤内の血管は次第に腫大,妊娠36週0日には最大7-8ミリにまで達し,内部に非拍動性の静脈流(6-7cm/秒)を認めた.妊娠37週1日総腸骨バルーンカテーテル留置後,予定帝王切開術を施行した.男児2689g,アプガースコア8/8点.自然離した胎盤剥離面から強出血を認めたため,数針結紮した後に子宮腔内にヨードホルム・ガーゼを充填し圧迫止血した.分娩時出血量は2560g(羊水込み)で,自己血1110mLを返血した.術後6日目での静脈瘤の血管径は2-3mmにまで著明に縮小し,筋層内の血流も著明に減少していた.
【考察】
妊娠に伴う巨大静脈瘤については,これまでに古典的帝王切開後の子宮漿膜下巨大静脈瘤や前置胎盤に合併した子宮頸管静脈瘤の報告があるが,本症例のようにhoneycomb構造を持つ子宮筋層内の巨大静脈瘤が妊娠に伴って次第に増大するも,分娩後に縮小したことを確認できた症例は今回が初めてである.巨大静脈瘤の発症原因は不明であるが,妊娠中期からの循環血液量の増大に伴い,胎盤直下の筋層内から骨盤壁へ戻る静脈血が増え,子宮下節内の血液うっ滞がより顕著になった結果生じたのではないかと推測された.