Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
胎盤・臍帯・母体卵巣

(S677)

Beckwith-Wiedemann症候群を合併した間葉性異形成胎盤の一例

A case of placental mesenchymal dysplasia complicated with Beckwith-Wiedemann syndrome

衛藤 英理子, 岡本 和浩, 谷 和祐, 牧 尉太, 江口 武志, 玉田 祥子, 光井 崇, 早田 桂, 増山 寿, 平松 祐司

Eriko ETO, Kazuhiro OKAMOTO, Kazuhiro TANI, Jota MAKI, Takeshi EGUCHI, Syoko TAMADA, Takashi MITSUI, Kei HAYATA, Hisashi MASUYAMA, Yuji HIRAMATSU

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科産科・婦人科学教室

Obstetrics & Gynecology, Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences

キーワード :

【緒言】
間葉性異形成胎盤(Placental mesenchymal dysplasia:PMD)は超音波断像法で胎盤の嚢胞状変化を呈する稀な疾患であり,娩出後に胎盤の病理所見から診断される.妊娠初期の超音波所見は部分胞状奇胎に類似しており,鑑別も重要である.PMDでは高率に妊娠高血圧症候群,早産,子宮内胎児死亡,胎児発育不全がみられるほか,児の約20%は巨舌や過成長を主徴とするBeckwith-Wiedemann症候群(BWS)を呈する.当院でBWSを合併したPMDを経験したため報告する.
【症例】
40歳,0経妊0経産.人工授精により妊娠成立.妊娠8週0日に異所性妊娠の疑いで当院へ紹介となった.経腟超音波検査では子宮内腔に突出する内部不均一な腫瘤像を認め,その隣に胎芽を確認した.妊娠11週0日には胎盤の一部が胞状奇胎様になっていたが,血清hCG値は119,625mIU/mLと正常範囲であった.可能性として胎児共存奇胎,部分胞状奇胎,PMDなどを考えながら慎重に管理を行っていた.妊娠14週0日NIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)を受検し,のちに陰性と判明した.妊娠14週4日の骨盤MRI検査では,正常の胎盤に連続してT2強調像で高信号を呈する小嚢胞が多発集簇した長径約10cmの構造物がみられた.妊娠17週0日の血清hCG値は88,996mIU/mLと下降に転じ,超音波検査では胎盤の嚢胞状構造は次第に不明瞭になった.本人と夫は絨毛検査などの追加検査を行わないままの妊娠継続を希望した.胎児発育は正常範囲上限で推移していたが,BPD(児頭大横径)・FL(大腿骨長)に比してAC(腹囲)が大きく妊娠26週4日には+4.8SDであった.また肝腫大が認められるようになり,AC拡大の原因と考えられた.妊娠27週0日,前期破水のため入院となった.胎児超音波検査ではBPD:68.6mm(-0.09SD),AC:28.61cm(+4.34SD),FL:46.1mm(-0.83SD)であり児体重は1477g(+2.53SD)と推定された.妊娠27週5日に妊娠高血圧症候群を発症したため緊急帝王切開分娩とした.児は1498gの女児でアプガースコア1分後2点,5分後6点であり,ただちにNICU管理となった.胎盤は705gと腫大しており過長臍帯であった.組織検査では大型で腫大した絨毛が認められ,栄養膜細胞の異常増殖はみられなかった.p57の免疫組織化学的染色では腫大絨毛の細胞性栄養膜細胞に陽性であったが間質細胞や血管内皮細胞には陰性であった.以上よりPMDと診断された.児は巨舌,過成長,肝腫大,高インスリン性低血糖などから臨床的にBWSを疑い,遺伝子検査により診断された.
【結語】
妊娠初期の超音波検査で胎盤に多数の小嚢胞像を認めた場合はPMDを念頭に置き,更にはBWSを合併する可能性も考えて慎重に周産期管理を行うことが重要である.