Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
胎児異常

(S676)

出生前より経過を追えた肝巨大血管腫の一例

Postnatal follow up of giant hemangioma of the liver detected in prenatal period

宮坂 祐輔, 斎田 司, 古西 崇寛, 石黒 聡尚, 増本 智彦, 梶川 大悟, 須磨崎 亮, 南 学

Yusuke MIYASAKA, Tsukasa SAIDA, Takahiro KONISHI, Toshitaka ISHIGURO, Tomohiko MASUMOTO, Daigo KAJIKAWA, Ryo SUMAZAKI, Manabu MINAMI

1筑波大学附属病院放射線診断・IVR科, 2筑波大学附属病院小児科, 3筑波メディカルセンター病院放射線科

1Diagnostic and Interventional Radiology, University of Tsukuba Hospital, 2Pediatrics, University of Tsukuba Hospital, 3Radiology, Tsukuba Medical Center Hospital

キーワード :

症例は0歳女児.在胎36週時に超音波検査で腹腔内腫瘍を指摘された.胎児MRIにて肝右葉に93mm大の腫瘍を認め,肝芽腫疑いにて当院へ紹介された.在胎37週に胎児心不全と診断され,帝王切開を施行.出生時の超音波検査では肝右葉の腫瘤は境界明瞭・辺縁円滑な無エコーの多房性嚢胞性病変で,嚢胞を介在するような高エコー域を認め,その内部に豊富な血流を伴っていた.なお,血液検査では新生児播種性血管内凝固症候群(DIC)診断基準を満たしていた.日齢5日では腫瘍は100mm大に増大し,嚢胞内の一部に出生時には認められなかった点状高エコ-が出現し,腫瘍内出血が疑われた.日齢7日の超音波では,肝右葉の腫瘤は100mm大で嚢胞内部は無エコーと低エコーがfluid-fluid levelを形成しており,腫瘍内の出血あるいは血栓を見ていると考えられた.中肝静脈や右肝静脈は腫瘤により強く圧排されていた.同日に行われた造影CTでは腫瘤の嚢胞内に造影早期からの造影剤の流入と貯留が認められた.超音波およびCT所見から,肝血管腫と診断し,プレドニゾロン5mg/dayによる治療が開始された.治療に伴いDIC,心不全の改善が認められた.また,その後経過観察で腫瘤の緩徐な縮小を確認した.
肝血管腫は胎児・新生児に発生する肝腫瘍の中では最も多い.予後は良好とされているが,肺水腫,DIC,腫瘍の破裂を合併した場合の予後は不良であるため,早期に診断することが肝要である.超音波検にて出生前より経過を追えた貴重な症例であるため,文献的考察を加えて報告する.