Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
胎児異常

(S675)

大動脈弓離断症と胎児診断された一例

Prenatal Diagnosis and Postnatal Corse of Interruption of aortic arch

長澤 智子, 三井 伸弥, 三井 卓弥, 田中 高志, 川瀧 元良

Tomoko NAGASAWA, Shinya MITSUI, Takuya MITSUI, Takashi TANAKA, Motoyoshi KAWATAKI

1医療法人なごみ会三井病院超音波検査室, 2医療法人なごみ会三井病院産婦人科, 3宮城県立こども病院循環器科, 4東北大学産婦人科

1Ultrasonography suite, Medical society of nagomi Mitsui hospital, 2Obstetrics and Gynecology, Medical society of nagomi Mitsui hospital, 3Pediatric Cardiology, Miyagi children's Hospital, 4Obstetrics and Gynecology, Tohoku University

キーワード :

今回,大動脈弓離断症と胎児診断され,早期に外科的治療に至った症例を経験したので報告する.
【症例】
1妊1経産.他院にて妊娠を確認.当院での妊婦健診,分娩を希望し前医より転院となる.当院にて妊婦健診施行.妊娠12週初期スクリーニングにおいて,発育は週数相当.NT:1.6mm.妊娠20週に行われた胎児心エコースクリーニングにおいて心疾患が疑われた.
【20週スクリーニング所見】
四腔断面において左心系,右心系のアンバランスはなし.心室中隔膜様部から流出路下にかけて2.8mmのLarge VSDを確認.VSDシャントは両方向だが左→右が優位だった.左室流出路から起始する上行大動脈の狭窄はなく,大動脈前壁の後方変位があるようにも見えた.3 vessel trachea viewでは動脈管が拡大し,大動脈弓は確認できなかった.大動脈弓の長軸断面では大動脈弓が確認できず.左室から伸びる上行大動脈が頭側に伸びている所見だった.以上の所見より大動脈弓離断症を疑い高次医療機関へ紹介となった.
【精査エコー所見】
高次医療機関精査エコーでは,四腔断面像において左心系右心系のアンバランスはなし.膜様部から流出路にかけて3.3mmのLarge VSDを認めた.VSDシャントは両方向だが,左→右シャント優位.左室流出路は狭めだが径4.8mmはあり,出生後の外科的治療も視野にあった.大動脈弓は3本の分枝を出した後,弧を描くような走行ではなく直線的に走行しており,下行大動脈への連続性はないように見えた.以上の所見より,大動脈弓離断症A型,心室中隔欠損症と胎児診断され,出生後の外科的治療の必要性が予測されたため,妊娠37週高次医療機関へ分娩管理入院となった.
【出生後の経過】
在胎39週,経膣分娩にて出生.アプガースコア1分後8点,5分後9点であった.出生後NICUへ収容された.出生後の新生児エコーの所見は,四腔断面像では左室・僧帽弁の低形成は合併せず,VSD所見はほとんど左→右シャントだった.動脈管弓に少しのridgeの張り出しがあり,両方向シャントだが,左→右シャントが目立ってきた.大動脈弓は胎児エコーと同じ所見であり大動脈弓と下行大動脈の交通はなかった.3DCTを撮影し大動脈弓と下行大動脈に連続性はなかったため,大動脈弓離断症A型,心室中隔欠損症と診断された.生後まもなくにプロスタグランジン点滴開始.生後2日より窒素吸入療法開始.生後7日根治手術の大動脈離断修復術,心室中隔欠損閉鎖術施行.術後5日目ICU退室し,術後20日目退院となる.外来観察にて経過は良好である.
【考察】
大動脈弓離断症は胎児診断症例が少なく,胎児診断されないとほぼ確実にductal shockを起こす疾患である.今回の症例では,胎児診断されていたため,ductal shockを起こすことなく早期に外科的治療に至った.胎児診断の重要性を改めて認識した症例だった.