Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2017 - Vol.44

Vol.44 No.Supplement

一般ポスター 産婦人科
胎児異常

(S674)

胎児の両側腋窩に発生したcystic hygromaの一例

A case of a fetus with bilateral axillary cystic hygroma

長屋 陽平, 梁 栄治, 森田 政義, 瀬戸 理玄, 生井 重成, 櫻井 理奈, 鎌田 英男, 木戸 浩一郎, 綾部 琢哉

Yohei NAGAYA, Eiji RYO, Masayoshi MORITA, Michiharu SETO, Sigenari NAMAI, Rina SAKURAI, Hideo KAMATA, Koichiro KIDO, Takuya AYABE

帝京大学医学部附属病院産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Teikyo University

キーワード :

【緒言】
Cystic hygromaはリンパ系と静脈系の還流障害に起因するリンパ管の拡張,もしくはリンパ管の異常な発達により生じる疾患であり,単房性,もしくは多房性の嚢胞塊の形成を特徴としている.多くのcystic hygromaは後頸部にみられ,その頻度は分娩例では6000分娩に1例程度である.他の発生部位としては腋窩,縦隔,四肢が知られているが,胎児期に診断された腋窩のcystic hygromaの報告は非常に稀である.今回我々は両側の腋窩cystic hygromaの症例を経験したので報告する.
【症例】
35歳1回経妊1回経産,前回の妊娠分娩歴に異常はなかった.今回自然妊娠し妊娠初期は前医で妊婦健診を受けていた.妊娠12週6日に当院紹介初診.その時点では明らかな異常所見を認めなかった.19週3日の妊婦健診時,経腹超音波断層法で胎児体幹の左右両側に右37mm×23mm,左49mm×33mm大の隔壁を伴う腫瘤像を認めた(図).心臓については細かい観察は困難であったが4腔断面は正常であった.またそれ以外の明らかな構造異常は認めなかった.上記超音波検査所見から両側腋窩のcystic hygromaである可能性が高いと診断.妊娠20週2日,右の腫瘤は49mm×33mm,左は56mm×66mmと左右共に増大傾向にあった.
本人と家族に染色体検査を提示したが,母胎適応による人工妊娠中絶を希望され,21週2日に児を娩出した.児の肉眼所見は右胸部から背部,左胸部から背部,前腕にかけて漿液性の嚢胞状腫瘤が認められた.胎盤は肉眼的には明らかな異常所見はなかった.本人ご家族ともに染色体検査および病理解剖は希望されなかった.
【考察】
Malone(文献1)らの約38,000妊娠における134例のcystic hygromaの報告によるとcystic hygromaの51%に染色体異常,34%に重大な合併奇形を認め生存例は17%であった.最近では診断のためにMRI検査の有用性も指摘されている.腋窩のリンパ管腫は全リンパ管腫の約10%で胎児期の報告は非常に稀である(文献2).腋窩のリンパ管腫により肩甲難産となった報告例もある.また頸部の病変に比べ染色体異常が少なく予後が良好である可能性も示唆されているが報告例が少なく明らかではない.慎重なカウンセリングが必要であり今後の症例の蓄積が望まれる.
文献1:Malone FD, et al. Obstet Gynecol. 2005;106:28894.
文献2:Akiko Hayashi, et al.Congenital Anomalies. 2005;45:154156.